ずっと消えずここにある 終わりのない挑戦は
描きかけの今 このまま走り続けるんだ
(ドロシーリトルハッピー「keep on tryin'」 作詞:白戸佳奈)
2014年4月27日、ドロシーリトルハッピーは、全国ツアーの最終日の会場となったO-EASTで「ドロシー史上最大キャパ」となるZepp DiverCityでのワンマンライブを9月6日に行うことを発表した。
2000人を越えるキャパへの挑戦のために、ドロシーはいくつか自らに課題を課したと思われるが、各メンバーが定期公演のセトリを独力で決めるシリーズを始めたのはその一つだろう。
東京定期では、昼の部が早坂香美、夜の部が高橋麻里。横浜定期では、昼の部が富永美杜、夜の部が秋元瑠海。各メンバーが「ドロシーの世界をどう伝えるか」を考え抜いた様子がありありだった。
さて、今日の仙台定期は長町RIPPLEでの開催。
昼の部も夜の部もリーダーの白戸佳奈プレゼンツ。しかも、昼の部の衣装はデビューミニアルバム「デモサヨナラ」のジャケット写真のものであると公表された。その意図はどこにあるのだろう。
公演前日のブログで白戸佳奈は書いた。
今回の定期ライブは
見ておいた方がいいと思いますっ!
それくらい自信があります。
みなさんに伝えたいことがある。
私たちの思い、受け取りに来てください!!
ドロシーの思いを受け取るために、これは見逃せない公演だと直観的に理解した。
「白戸佳奈はドロシーの軌跡をどう見せるか」にも興味があるが、その前提となる「白戸佳奈はドロシーの軌跡をどう自己評価しているのか」の方に、さらに関心がある。彼女がよく言う「遠回りもしたけれど」の真意をも含めて。
今日の公演は、セトリのような基礎情報だけでは十分ではなく、MCのようなバーバルコミュニケーションに加え、衣装や、振り付けのニュアンスや、目線や表情などのノンバーバルコミュニケーションも見逃すことができない。そういったもの全てを捉えることで、ようやく、いまのドロシーが伝えたいことを全部受け止めることができる。そういう類の公演になるはずだ。
さて昼の部。
メジャーデビュー当時の衣装で登場したメンバー。ヘアスタイルとメイクの再現度も高く、みんなあどけない少女に戻ったよう。
衣装からのぞくおへそに目を奪われる間もなく、「Hi So Jump~Happy Dance Remix~」「ドロシーの世界一周夏物語」を立て続けに披露。
自己紹介では、早坂香美が「社会でなくて、こうみんです」という懐かしいパターンを見せてくれた。
佳奈ちゃんの説明によれば、今日の昼の部のテーマは結成4周年と「sky traveler」にちなんで「タイムトラベラー」。
結成当時のことを知らない人にも、当時のドロシーのことを知ってほしいという意図。
「never stop again!!」「Hey Boy! Hey Girl!」「トライアングルスクエア」とレアな曲が続いた後、坂本サトル作品の「部屋とパジャマと私」が来て、ここで僕の涙腺は崩壊。
デビューの頃のドロシーを知らなかった僕は、当時のステージを見てみたいという叶わない夢を抱いていたけれど、当時の衣装、髪型、雰囲気を忠実に再現してくれた嬉しさに泣いている。
「見ていてエンジェル」「風よはやく」というバラード〜ミディアムテンポの曲が続いたあと、ここでギアが入れ替わる。
デビュー曲の「ジャンプ!」で、観客全員の身体が動き出し、コールがライブハウスにこだまする。
畳み掛けるように「ソウル17」「Happy Days!」「飛び出せ!サマータイム」そして、「未来への虹」「ナミダよりもずっと早く」の流れで盛り上がりも最高潮。
メンバーもみんな若返ったようなバイタリティ。高橋麻里のボーカルはいつもより高めに響いているし、富永美杜の煽りはいつもより激しいし、白戸佳奈と早坂香美のダンスも弾けていて、秋元瑠海も初々しい表情に見える。
MCでは、佳奈ちゃんが「初心を忘れずにいたい」と改めて強調。デビューの頃には言葉にできない苦労もあったと思うが、それを忘れずに、決して慢心することなく、挑戦を続ける姿勢は、実に美しい。
夜の部につなげる「未来へ」を歌い、最後は当時も今もドロシーのキラーチューンの「デモサヨナラ」。
「ドロシーはデモサヨナラだけではない」と何度も言っているけれども、やはりこの圧巻の\オレモー!/の盛り上がりを体感すると、セトリには欠かせない曲だと思う。
佳奈ちゃんが終盤のMCで「私一つ大事なことを言い忘れてたんですけど、この衣装でチェキ撮りたいって方が結構いらっしゃるんじゃないかと…(場内拍手) なので、スタッフの人に2ショットチェキの当たりを多めに入れてもらいました!」と言ったこともあり、終了後の握手会とチェキ会にはスタッフの想定以上の人が列を作り、お楽しみBOXの中身が枯渇するほどだった。
僕も一枚パチリ。
(昼の部セットリスト)
01:Hi So Jump~Happy Dance Remix~
02:ドロシーの世界一周夏物語
03:never stop again!!
04:Hey Boy! Hey Girl!
05:トライアングルスクエア
06:部屋とパジャマと私
07:見ていてエンジェル
08:風よはやく
09:ジャンプ!
10:ソウル17
11:Happy Days!
12:飛び出せ!サマータイム
13:未来への虹
14:ナミダよりもずっと早く
15:未来へ
16:デモサヨナラ
続いて夜の部。
本日初披露となった白いワンピースの衣装で登場したメンバーは、冒頭からアクセル全開。
ノンストップで「諦めないで」「GET YOU」「恋は走りだした」「ナミダよりずっと早く」「恋の花火」の5曲を歌った。
冒頭から5曲連続、しかもアップテンポ中心と、ドロシーにとってはかなりの挑戦。
以前、「いまのドロシーはZepp DiverCityに向けて創造的破壊をしている」と見立てたけれども、今日の夜の部の白戸佳奈プレゼンツのセトリは、まさに創造的破壊そのもの。まさにイノベーター白戸佳奈。
ここでようやくMC。自己紹介に続き、佳奈ちゃんからは「昼の部はタイムトラベラーがテーマでしたが、夜の部は現在、いや未来へ戻ってきたということで」との説明。
「恋の花火」は仙台では初披露だったが、東京定期、横浜定期などを経て定着してきたコールで大いに盛り上がった。
続いて、「sky traveler」と、世界初披露の「keep on tryin'」を。イントロでどよめきが起こった。「終わりのない挑戦」を歌った白戸佳奈の作詞による楽曲は、聞けば聞くほど、ドロシーらしい、佳奈ちゃんらしい世界観の歌詞。
MCでは自分の作詞の出来栄えについて、「後で聞いてみると、ちょっと真面目すぎたかもしれない」と言っていた佳奈ちゃんだが、そんなところも含めて彼女らしさを体現する楽曲だと思う。
という真面目な話をしているところで、ジャケット写真の撮影のときに、スタッフが白い風船をふくらませていたのが割れたときに「いやーん、かな、風船こわ〜い!」と大声を出したことを、モノマネ付きで暴露されていた。その声の方に他のメンバーがびっくりしたとか。場内爆笑。
ここからはMCを挟まず、ドロシーの最高記録を更新する7曲ノンストップ。
「colorful life」「どこか連れていって」「青い空」「永遠になれ」「ストーリー」「ジャンプ!」「未来へ」。
このタイトルを並べるだけでも、佳奈ちゃんの伝えたい思いが痛いほどに伝わる。ドロシーというグループの凄さを感じずにはいられない。
ドロシーは、与えられた曲を歌わされているグループではない。そのことが誰にでもはっきりと伝わるセトリ。いま、セトリだけでここまで明確にメッセージを示せるアーティストを、僕はドロシー以外には知らない。
ここで佳奈ちゃんのMC。
いままでとは形を変えたい、何かやらなきゃいけないと思って頑張りました。
いまのドロシーにとっては9/6のZepp DiverCityのワンマンを成功させるのが最大の目標です。そのためには、この夏はいろいろな課題に挑戦していかないといけないと思っています。
まずシングルの 「sky traveler」を多くの人に伝えることを頑張ります。
どうか、みなさんの力を貸してください。
続いて、今回の一連のメンバープレゼンツのセトリの試みについて一言ずつ。
こうみん「何かを変えたいと思っていた。今回のセトリでは、自分の個性を見てもらえてよかった」
るうちゃん「MC以外は最高のセトリだったと思います。聴く人の立場で聴きたい曲で作った自信作です」
みも「曲は良かったけど、曲のつなぎのMCがちょっと下手だった。次は頑張りたい」
すかさず、こうみんから「そこは私はうまかった!」とのツッコミ。こういう言いたいことを言い合えるメンバー相互の信頼関係がドロシーの強みだと思う。
最後に麻里ちゃんが、「各メンバーが何を考えているのかわかってよかった」と年長者らしい発言。
締めは「明日は晴れるよ」と「14回目のありがとう」。
この辺でドロシーからの感謝の気持ちがひしひしと伝わってきて、またしても涙腺崩壊。佳奈ちゃんの歌声も上ずっているように聞こえる。きっと気のせいではない。
メンバーが挨拶して退場し、館内にはBGMが流れるが、アンコールの声が鳴り止まない。
再び登場して披露した曲は、「臨戦態勢が止まらない」と「My Darling」。ドロシーのこれまでのアンコール曲からすると異例の組み合わせ。
よく言われる「ドロシーらしさ」というものは、このグループが一貫して守っている価値観だが、一歩間違えれば、自らを狭い檻に閉じ込めかねない危険もある。だが、決して小さくまとまることなく、見えない檻を壊してまでも「ドロシーらしさ」という固定観念を自ら組換えてスケールアップしようとしているのがいまのドロシーだ。
そして、いまの白戸佳奈は一歩も間違っていないことを自ら示した。夜の部が終わった後の彼女の顔は、自ら手応えを感じたような自信に満ちた表情だった。
いま彼女達は、「ドロシーのセトリって…」と訳知り顔で在宅で評論していては決して想像もつかない領域にいる。
今日の昼夜のセトリには、Zepp DiverCityのワンマンに向けたドロシーの意気込みが体現されていた。
過去を再現して肯定した上で、卵の殻を割ることを恐れない白戸佳奈の姿勢は素晴らしいとしか言いようがなく、このリーダーを中心に常に挑戦を続けるドロシーというグループは、もっと上に行ける。その過程をつぶさに見つめられれば幸せだと思っているので、今日現場にいてよかった。
こうした挑戦の成果を見ることができる9月6日のZepp DiverCityのドロシーのワンマン。ドロシーのコアなファン以外にとっても、2014年のライブの中で、見逃せないものの一つになることは必至だと思う。ますます楽しみになったし、今夜の試みを目の当たりにして、成功への確かな手掛かりを得たと確信した。
ドロシーの世界は確実にスケールを拡大しつつあり、Zeppという大舞台に向けて、いよいよ新しい姿を見せてきた。そんな仙台定期だった。
(夜の部セットリスト)
01:諦めないで
02:GET YOU
03:恋は走りだした
04:ナミダよりずっと早く
05:恋の花火
06:sky traveler
07:keep on tryin'
08:colorful life
09:どこか連れていって
10:青い空
11:永遠になれ
12:ストーリー
13:ジャンプ!
14:未来へ
15:明日は晴れるよ
16:14回目のありがとう
(アンコール)
en1:臨戦態勢が止まらない
en2:My Darling