天才はいかに世界を変えるか―『ソーシャルネットワーク』

人生で一度も失敗したことがないという人がいたらそれは一度も挑戦したことのない人だ。
アルバート・アインシュタイン

天才は世の中を変える。その独創的なアイデアによって。だが、アイデアを具体化するには、協力者の働きかけが必要だ。

この映画では、Facebookの創設者であるマーク・ザッカーバーグをめぐる実話を描いている。描かれているのは善意ばかりではない。ここには、醜い争いも、冷酷な裏切りもある。金銭が絡むところのギラギラしたところは、さすがアメリカだと思わせる(「広告はクールじゃない」とマークがこだわるあたりは、日本のmixiの方針と対照的で興味深い)。

僕自身のFacebookのアカウントはほとんど休眠状態だけれども、このSNSがいかに「クール」なものとしてアメリカの若者の心を捉えたのかは理解できる。Napsterのショーン・ファニングが登場するあたりの「いやらしさ」は絶品だ。

エジプトのムバラクを権力の座から追放したのはFacebookを通じた若者の言論のパワーだというような俗説もある。真偽のほどは分からない(個人的には懐疑的だ)。しかし、独裁国家の政権基盤さえ揺るがしかねないと思わせるほどのパワーの源泉を探るには、この作品を観ることは有益だ。デヴィッド・フィンチャーがこの題材を取り上げたのもうなずける。