キャラチェンジに成功―『アメイジング・スパイダーマン』

新監督、新キャストによる新しいスパイダーマン。『(500)日のサマー』のマーク・ウェブ監督ということで、期待していた通り、単なるアメコミヒーローものにとどまらず、繊細な若者の葛藤を巧みに描いている。

公式サイト:アメイジング・スパイダーマン™ - オフィシャルサイト|11.14 セル3D/2Dブルーレイ&DVDリリース デジタル配信同時スタート

ストーリー自体は、スパイダーマンシリーズの設定を踏襲。すなわち、亡くなってしまう人はやっぱり亡くなるし、戦うことになる人はやっぱり戦う。あまり書くとネタバレになりそうなので、この辺にしておく。

主人公役がアンドリュー・ガーフィールドになったことで、キャラ的には「素材はいいのにコミュニケーションが苦手な理系男子」という感じに微妙にキャラチェンジ。このスマートで軽妙で草食系なテイストは『ソーシャル・ネットワーク』っぽいというか。情報収集もネット検索を活用。いわばFacebookスパイダーマン。従来のシリーズは低年齢層の視聴者を意識してか、平易な台詞が中心だったが、新シリーズは早口でくだけた表現が多かったのも、ちょっと『ソーシャル・ネットワーク』のテイストを思わせた。

それに対して、新ヒロインのグウェンを演じたエマ・ストーンは個人的にはちょっと印象が弱かった。というか、ガーフィールドが子供っぽいところを残しているのに対して、なんとも堂々とした落ち着きっぷり。いまにして思れば、必ずしも評判のよくなかったキルスティン・ダンストの演じていたMJの「味わい」が懐かしいなどと贅沢なことを言ってみたくなる。

個人的なベストキャストは、おじさん役のマーティン・シーン。愚直で骨のある人を演じさせたらこの人の右に出る人はいないだろう。続いて、片腕の博士役のリス・エヴァンスが印象的。『ハリーポッター』シリーズ終盤でルーナの父親役を演じた人だった。風変わりな雰囲気はこの人の持ち味。この作品も『ハリーポッター』同様シリーズ化する気満々。続編は2014年5月公開を目指しているとか。

今回3Dで観賞したが、3Dという技術はまさにこういう作品のためにあると言い切っていいほどの相性の良さ。特に、ニューヨークの街を飛び回るシーンでは、特殊効果だと分かっていても思わず体を動かしたくなるような場面もあった。世界中のどこを探しても、この街ほどスパイダーマンが滑空するのに相応しいところはない。ニューヨーク市民との連帯も見所の一つ。アメリカなら「9.11後」の「連帯」。日本なら「3.11後」の「絆」というべきか。「正義」について考えながらも、バットマンのように悶々とすることはなく、とにかくまず体を動かして市民を守ろうとするスパイダーマン。青春映画として観ても良作だと思う。