コニカミノルタの撤退だけでは終わらない

コニカミノルタが、カメラ事業・フォト事業の終了を発表した。カメラ事業はソニーへ譲渡することで合意、かろうじてαマウントは存続する模様*1

ソニー株式会社(以下 ソニー)とコニカミノルタフォトイメージング株式会社(以下コニカミノルタPI)は、2005年7月よりレンズ交換式デジタル一眼レフカメラ(以下、デジタル一眼レフカメラ)の共同開発を進めてまいりました。このたび、ソニーと、コニカミノルタホールディングス株式会社およびコニカミノルタPIはコニカミノルタPIが持つデジタル一眼レフカメラ関連の一部資産をソニーへ譲渡し、あわせてコニカミノルタのカメラ並びにその関連製品*1のアフターサービス業務を委受託することなどで合意し、本日契約を締結いたしました。

今回の締結により、ソニーは、デジタル一眼レフカメラを含めたデジタルイメージング事業をさらに強化すべく、コニカミノルタPIの持つ、「αマウントシステム*2」と互換性を持つデジタル一眼レフカメラに関連する開発、設計、製造などに必要な一部資産を2006年3月31日付けでコニカミノルタPIより取得します。ソニーは今後、「αマウントシステム」に準拠し、同システムと互換性を持つ、新たなデジタル一眼レフカメラの開発を加速し、今夏の発売を目指します。
レンズ交換式デジタル一眼レフカメラ関連の一部資産譲渡等について | コニカミノルタ

コニカミノルタは、昨年7月にソニーとの間でデジタル一眼レフの共同開発に合意していたため(2005年7月19日付2005-07-19 - Sharpのアンシャープ日記参照)、譲渡の相手方がソニーであることにサプライズはない。

一眼レフメーカーの中では一番遅れて商品化されたαデジタルは、アンチシェイク(手ぶれ防止)を内蔵していて内容的には悪くはなかったが、いかんせんデビューが遅すぎた。そして、この種のデジタルモノにとっては、商品化の遅れは「致命傷」になる。

たとえば、キヤノンが入門機であるEOS KISSを第二世代に進化させてAPS-Cでは800万画素がスタンダードになりつつある中で、主力機のα-7 DIGITAL(添付画像)が600万画素というのはいかにも見劣りするスペックになっていた*2。さらに、キヤノンがフルサイズの中級機EOS 5Dをリリースするなどハイアマチュア向けの商品開発競争が加速する中で、コニカミノルタの体力では、市場のスピードに追いついていけないことは明らかだった*3

また、フィルム時代から定評のあったレンズも、α-7デジタル向けに新たに用意されたものは、タムロンのOEMとおぼしき17−35mmと28−75mmのズームであり、コニカミノルタの台所事情の苦しさを想像させた。何よりも「このレンズを使いたいからコニカミノルタを選ぶ」という必然性が乏しくなっていた。

今回のソニーへの譲渡に伴い、αマウントの規格は残るようだが、αシリーズの名前は消えるだろう*4。フィルム時代にAF一眼レフの市場で「αシリーズ」がトップシェアを押さえていた時代があったことを思うと、感慨深さを感じる人もいるかもしれない。だが、カメラを巡る環境の変化はそれくらい劇的だということだ。

京セラのCONTAX事業の終了、ニコンのフィルムカメラ事業の大幅縮小に続いて、今回のコニカミノルタのカメラ事業の終了と、企業間の優勝劣敗は誰の目にも明らかになってきた。もはや「伝統」だの「メンツ」だとと言っている余裕はない。なりふり構わずに経営資源を集中しなければ、会社の存続が危うくなってしまう。

となると「他のカメラメーカーは大丈夫?」という疑問が湧くのは当然だろう。真っ先に連想されるのは、松下と提携しているオリンパスだ。オリンパスデジタル一眼レフも、ダストリダクションという特徴を持ってはいるものの、フォーサーズというユニークな規格ゆえにか、なかなかマーケットでのシェアを高めることができずにいる。E-1がいまだに500万画素でフラグシップとして頑張っているが、他社の中級機が軒並み高性能化する中では、いくら「デジカメの性能は画素数だけで決まらない」といったところで、多数の支持を得ることは難しくなっている。次期機種の早期開発が難しいとなると、松下へのカメラ事業の譲渡はあり得る選択だと思う*5

あとは、ペンタックスがどう出るか*6。いずれにしても、2006年はカメラ業界にとって波乱の年になりそうだ。

*1:より正確には、αマウントシステムと互換性を持つシステムをソニーが開発する

*2:個人的には、デジカメの優劣を画素数だけで語るのは誤りだと思うが、性能を測る重要なファクターの一つとして決して無視できるものではない

*3:もちろん、コニカミノルタが良心的であるかどうかというのとは全く別の問題である。ビジネスというのは、非情なものなのだ

*4:そして、恐ろしいことにメモリースティック対応になるだろう

*5:その場合にも、オリンパスフォーサーズ向けの交換レンズの供給は残すだろう

*6:昨年11月に、韓国のサムソンとの提携を発表