『あのこは貴族』(2021年、岨手由貴子監督)

『あのこは貴族』を観に、新宿武蔵野館へ。

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山内マリコの2015年の小説を原作に岨手由貴子監督が映画化したもの。

東京の山手に生まれ育って何不自由なく生活を送ってきて婚期を迎えて久しいアラサーのお嬢様。

地方都市(原作者の出身地と同じ富山)から上京して大学生活を送るも実家の経済的困窮もあってドロップアウトを余儀なくされ、社会に飛び込んだキャリア女子。

東京に代々住む人々と、上京して夢を追う人々は、幾何的には「ねじれの関係」にある。

つまり、交わるようで交わらない。

そんな中で、この二人がふとしたきっかけで出会い、やがて瞬間心重なっていくという物語。

見えない階級(クラス)の中でどちらにも息苦しさがあって、でも、その中で自分を実現することの意味を見出していく。

ぼーっとしているようでいて最後に自分の意思を強く示す門脇麦の演技にはリアリティがあった。

対する水原希子の方も、どうやっても「スクリーン映え」する存在感を持ちながら、力まなくてもナチュラルに輝けるのが彼女らしかった。

政治家も輩出する名門の家に生まれ、付属から慶応で弁護士という男が持つ「育ちの良さ」と「ずるさ」の二面性を嫌味なく演じる高良健吾もさすがではあった。

準主役級で言えば、世界を股にかける活躍を目指す若き音楽家を演じた石橋静河は、さすが板についている雰囲気があったし、12代目リハウスガールだった山下リオも今やタフな役が似合うほどに成長。

個人的には、高田里穂の出演を見つけてうれしくなった。


この物語のような「東京」を観る目は、いかにも地方出身者ならではという感じがあって、原作者の山内マリコは富山出身、岨手由貴子監督は長野出身ということで、だからこそテーマやスタンスがブレずに映画化できたのではないかという感じがした。