「リビングルーム」@萬劇場(千穐楽)

元アイドルネッサンス比嘉奈菜子が、グループ解散後に初めて挑んだのは舞台「リビングルーム」。

千穐楽のソワレを観に、JR大塚駅に近い萬劇場に足を運んで来た。

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出演は以下の7名。

比嘉奈菜子
渡久山美月
吉田奎介
白河優菜
佐藤梨菜
保田真愛
安田彩奈

比嘉が演じたのは、上京してシェアルームで暮らしながら自分の夢に向かって頑張る美咲。

純真で多感な思春期の女子という役どころは、彼女自身と重なるところも大きく、実に自然に透明感たっぷりに演じた。



(以下ネタバレを含む)

主役ということでセリフの多さもさることながら、実は幽霊であるというところが難しい役どころ。

僕は、最初の登場シーンから、純白のワンピースに身を包んでいるのを見て、記号として「幽霊」だということが分かった。

劇団四季の『夢から醒めた夢』のマコ、『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』のめんまと同じく。

最初の場面で平昌オリンピックの話題になって会話が噛み合っていなかったのも、宗教にはまっているサラが「あなた死相が出てるわよ」と言ってそれを周囲が全力で否定しにかかったのも、分かりやすい伏線だった。

現世での生命を終えてもなお未練を残してさまよう幽霊を“成仏”させる方法は、古今東西ただ一つ。本人に自らが愛されていたこと、今もなお愛されていることを理解してもらうしかない。

それによって後悔や迷いをなくして安らかに次の世界に行くことができる。

この舞台の場合も、最終的には、自分が既に亡くなっていることを理解し、周囲に感謝しながら”成仏する”というエンディングなのだが、この「居心地のいいコミュニティへの未練を断ち切って前に進む」という展開は、アイドルネッサンス解散でソロになった彼女自身やアイドルネッサンスのファンたちの姿への“応援歌”のようにも思われた。

共演者の元SiAM&POPTUNeのリーダー”みづきち”渡久山美月は、シャムの頃とはまた違った新しい一面を見せてくれた。

白河優菜は、落ち着いた雰囲気で芝居の「空気」を作り上げ、事実上のチームリーダー的な風格をまとっていた。

佐藤梨菜は、韓国系という設定の役どころで、日本語を勉強しているという設定が生み出す「おかしさ」を見せてくれた。真面目にやればやるほど面白いというコメディエンヌ的なカラーがよかったと思う。

保田真愛は、宗教にハマっている人物で、ゴスロリ風の漆黒の衣装に、メンヘラっぽい不安定な言動を説得力を持って演じていた。シュッとした体躯も舞台映えしていた。

安田彩奈は、お酒好きという設定で明るい空気をこの芝居に吹き込む役だったが、独特の存在感が忘れがたい印象を残した。


唯一の男性・吉田奎介は、この手の「元アイドル」が出演する芝居では男性ファンから厳しい目で見られがちなところを、好感度の高い雰囲気で魅力的に演じていた。「劇中劇」での振幅の大きさにも情熱を感じさせた。


ストーリー的には、比嘉奈菜子のために当て書きされたのではないか、と思われるくらいに、彼女の今の境遇にシンクロしていたが、そのことを差し引いたとしても、比嘉なくしてはこの舞台は存在しなかったのではないかというくらいの説得力があった。

いい形で舞台女優としてのキャリアを歩み出したと思う。

会場に来ていた観客の半数以上はアイドルネッサンスの現場で会ったことのある人で、特典会での列を見ても、これだけの動員ができるというのもまた比嘉の「実力」であろう。

舞台でキラキラと輝く”なっこ”の今後の活躍に期待したい。



終演後は特典会へ。

台本への全員サインで感想を全員に伝えることができた。

チェキはまずは保田真愛さんへ。

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エキセントリックなサラ役の格好で「呪ってもいいですか?」と聞かれてこのポーズ。

10年来グラビアでファンだったまいさんのガチのお芝居を見られて色々と話せて感動した。

そして比嘉奈菜子さんへ。

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「いつもありがとう」が「比嘉」になっているサインいいよね。


お芝居の運営はジ・ズーがやっていて、昨日のパンダみっくのワンマンでお世話になったスタッフの方に二日連続で会ってしまった。だが、物販や特典会の仕切りに安心感があった。


アイドルライブシーンの潮目は変わりつつあるけれども、こういう演劇的なものは増えていくのかもしれないと思った。