「いつ買うか? 今じゃないでしょ!」
「というか、むしろ買わない方がいいでしょ!」
これがデフレの論理だ。
時間が経てば、値段が下がる。
だから買わない。
そして、ますます値段が下がる。
その間、自らの所得も下がる。
これがデフレスパイラルだ。
昨年、安倍は「脱デフレ」を掲げて、断固としたリーダーシップで人々の「期待」を変えた。
今年、黒田は「異次元緩和」で、市場参加者の「期待」を変えた。
そして、いま、林修が、あちこちで「いつやるか? いまでしょ!」と叫び、人々の行動を促す。
車の購入、海外旅行、金融商品への投資。
そのうち「マイホームいつ買うか? 今でしょ!」という不動産屋の広告も出るに違いない。
林修はもともとは「勉強するのは今でしょ!」という文脈で語っていた。だが、そんな当初の意図などお構いなしに、「今でしょ!」は、消費を煽り、投資を煽る。
これは、アベノミクスにより日本経済が脱デフレへと転換する流れと完全にシンクロしている。首相は国家戦略を定め、日銀は金融政策を実行する。だが、首相や日銀総裁は、大衆を動かすことまではできない。
そこは「流行」「風俗」の役割である。
江戸幕府から明治政府に変わったときの「ええじゃないか」のように、あるいは、自由民権運動のときの「オッペケペー」のように、脱デフレのいま「今でしょ!」が、潮流の変化を象徴する存在となっている。
「いつやるか? 今でしょ!」は、2013年の流行語大賞の有力候補になるだろうが、それは、林修のキャラクターゆえではない。彼の本来の意図からは完全にずれてしまっているのだが、アベノミクスに乗り遅れまいとする大衆の焦りを見事に突くことで消費や投資を煽っている貢献ゆえだろう。