レイさんマジ天使!…『南極点のピアピア動画』

動画サイトとボーカロイドの登場する近未来ハードSF―
とか畏まった言い方よりも「ニコ動+ミク」で描くSF、というべきかもしれない。作中では、ピアピア動画であり、小隅レイなんだけど。小隅は「Cosmic」から、レイは「綾波」から、それぞれ取っているのかなと勝手に推察。

「南極点のピアピア動画」「コンビニエンスなピアピア動画」「歌う潜水艦とピアピア動画」「星間文明とピアピア動画」の4連作。書下ろしは最後の作品のみで、他はSFマガジン掲載作品。

個人的に一番気に入ったのは「南極点のピアピア動画」。宇宙へ飛ぶ話なのだが、最後のボカロの歌う曲の歌詞が良い。あれ、目から水が…という感じ。なぜかミクの声でメロディーが聞こえてきた。それにしても、これはどういう条件でコードを書いたんだろうな。絶妙すぎる。

次に気に入ったのは「歌う潜水艦とピアピア動画」。潜水艦から発するミクの声でクジラと交流する話と思わせて実は…という展開。まさにセンス・オブ・ワンダーですな。

最新の「星間文明とピアピア動画」も筆が乗っている感じで面白かった。「一般意志2.0」ネタとかくすっと笑わせる小ネタが散りばめられている。東浩紀はこれを知っているのだろうか。

巻末にはドワンゴの川上会長の解説。解説というよりは、自社の宣伝っぽいところとか、ちょっと馴れ合いめいた感じもしたが、まあニコニコ動画ネタの単行本の人選としてはよいネタだと思う。

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)

南極点のピアピア動画 (ハヤカワ文庫JA)