まさに「パーク」―『ジュラシック・パーク』BD

スピルバーグの力量は大したものだ。だが、僕にはどうも合わない。ずっとそう思っていた。CGの金字塔と言われるこの作品を今回BDで視聴したが、結局、その苦手意識は変わらなかった。以下ネタバレ。

パークの生みの親であるジョン・ハモンドは、子供の頃からの夢を忘れない。莫大な資金を注ぎ込み、可能な限りの有能な人を集めて、誰もが不可能と思っていたような「パーク」を現実世界に出現させる。彼はとことんお客さんを喜ばせようとあちこちに仕掛けを拵える。この姿は、まさにスピルバーグそのものだ。

この「パーク」が子供向け、あるいは、子供も含めた家族で楽しめるエンタテインメントであることの鏡写しとして、この『ジュラシック・パーク』という映画も子供向けに仕上がっている。テクノロジー面白い! 肉食恐竜怖い!などなど。

確かに、20年位前のCGで動いている恐竜は、BD化された精細な映像で見ても破綻がない。リアルの俳優との共演にも違和感なく馴染んでいる。大した技術だと思う。ある意味で、この映画自体が、よく出来た「パーク」のようなものだ。

だが、この映画の魅力のほとんどはその点に集約されてしまっている。いろいろな人が出てくる割にはステレオタイプな人物ばかりだし、群像劇としてみた場合にも信念をぶつけ合うという要素が足りない。エンディングもいかにも勧善懲悪的だ。

何よりも、物語のクライマックスが、子供達と恐竜の鬼ごっこというのも、対象とする顧客層に忠実ではあるが、作品としてはリアリティを欠く仕上がりになってしまっている。心を打つこともない。

結局のところ、ヒューマンドラマを二の次にして、CGというテクノロジーの凄さを見せつけることに主眼が置かれている。その分、時代を越える作品にはなれなかったということではないか。もちろん、「当時としては」というカッコ付きでは、意義のある作品ではあると思うものの、この20年でクリーチャーをCGで動かす技術は格段に飛躍しており、ピーター・ジャクソンの『キングコング』のようなスケールの大きな最近の作品と比べると、物足りないとさえ思える。

現在BDで「トリロジー」として販売されているが、突出して評価の高い「1」をしてもこういう感想しか出てこないのだから、さらに評価の低い続編の「2」「3」を見る気にはなれない。まして、この商品の場合、デジタル・コピーのディスクの梱包が本体とは別になっている等パッケージとしての完成度も最悪。ということで、廉価盤の出ないうちにBOXごと処分した。個人的にはBD-BOXブームだが、名作だと言われていても飛びつかずに内容を吟味して自分の好みも考えて買うべきだということがよく分かった。

ジュラシック・パーク アルティメット・トリロジー  [Blu-ray]

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