何かを得るためには何かを失わなくてはならない〜『ストライクウィッチーズ2』最終回

ストライクウィッチーズ2』最終回を観た。以下ネタバレ。

何かを得るためには何かを失わなくてはならない。何も失わずに得られるものがあるとしたら、それはたいしたものではない。代償を払ってはじめて、大切なものを得ることができる*1

上官の坂本美緒は、長年の戦果と引き換えに魔法力を失っていった。魔力を注入して強化した烈風丸でさえ、最後は彼女の魔法力を最後の一滴まで吸い尽くすようになった。それでも彼女はネウロイの巣に挑む戦艦大和に突撃する。魔法力を失っても、命を失っても、成し遂げるべき信念がそこにあるから。

そして、宮藤芳佳は、坂本を救うため、あるいは大切な人たちの平和を守るため、自らの持つ魔法力を全部消耗しても構わないと願う。自らの能力と引き換えに、敵を一掃できるのであれば、喜んで魔法力を捧げると。その結果、彼女の全魔法力を注ぎ込んだ烈風丸がネウロイの巣を破壊し、ロマーニャに平和が訪れる。坂本も宮藤も生還するが、平和を獲得した代償としてウィッチとしての能力を完全に失った。

これが『ストライクウィッチーズ2』の最終回の結末だ。主人公はもう戦えない。だが、彼女が望んでいたのは、戦うことでも、敵を倒すことでもなかった。「大切な人を守る」ということこそが、彼女の理想だった。そしてその目的はもっとも危機的な局面で立派に成し遂げられた。魔法力を失い、平和を得たのだ。

この交換を立派に成し遂げたところに、僕らは宮藤の成長を、そして自己実現を見る。これでよかった。もし「高校は卒業した、でも放課後ティータイムはこれからも続く!」と同じようなノリで、「ロマーニャ上空のネウロイの巣は破壊した、でも501統合戦闘航空団の戦いはこれからも続く!」とでもなっていたら、そこには成長がなく、ゆえに僕はこの作品の評価を下げざるを得なかったから。そう考えると、理想的な最終回であり、神アニメとしての評価を固めたと思う。

では、『ストライクウィッチーズ』はもう終わりなのか。エンディングにその方向が示されている。宮藤らの所属していた501統合戦闘航空団は解散。だが他のウィッチの部隊が、世界の至るところでネウロイと戦っている。502、503、504。キャラの立ち方の相違はあれども、そうしたウィッチたちが、僕たちに新しい物語を見せてくれるはず。ペリーヌを失った後に、ジョーゼットが来てくれるかもしれない。そう、僕らも502を得るためには、501を失わなくてはならなかったんだ! …そうでも思わないと、この喪失感は埋められない。

*1:もちろん、ここでいう「得る」には「守る」とか「失う」も含まれる