ヤング渡辺淳一〜『光と影』

いまや日経新聞の連載でエロ小説書いているおじいさんというイメージばかりのズンイチ先生こと渡辺淳一先生。でも、若い頃には『光と影』で直木賞を受賞していたのだ。

光と影 (文春文庫)

光と影 (文春文庫)

ということで『光と影』を読んだ。明治時代のとある軍人二人に題材を取った小説。

西南戦争(1877)に従軍し、共に右腕を負傷した陸軍大尉・小武敬介(作者が創造した人物か)と同期の寺内寿三郎(後の正毅。実在の人物)は大阪臨時陸軍病院で佐藤進外科部長から同じ日に手術を受ける。当時の医学水準では、切断が生き延びる唯一の方法だと考えられた。ところが、佐藤軍医はドイツの医学書に出ている腕を切断しない治療法の「実験」をやってみる気になった。小武は普通の切断手術、寺内には腕を生かす手術を施された。苦痛の大きさと治癒期間の長さは寺内のほうが圧倒的であったが、機能的には不全だがともかく寺内の腕は残った。小武は片腕となった。二人はその後対照的なまさに「光と影」の人生を送る。

歴史小説でもあり、医学小説でもあり、とにかく硬派。艶めいた場面は皆無。こういうのばかり書いていればよかったのにとも思わせる。