『とある魔術の禁書目録(10)』

「大覇星祭」と名の体育祭シリーズの後編(この「覇星」という名前に伏線が隠されている)。学園都市の一大イベントと敵との闘いに決着を付ける。クライマックスは、前巻で想像していた以上には劇的だった。

作家の筆力にはもはや安定感があり、魅力的なイラストとの相乗効果はますばかりだが、肝心のストーリーの焦点がぼやけてきている。要は「ダラダラ感」が出ているのだ。それは、キャラクターの「使い捨て」傾向(とも合わせて、この作品が一体どこに向かおうとしているのか不安に思わせる。

おそらくは「魔術」と「超能力」の対決を描くのでなく、「ローマ正教の覇権主義」対「少数派を含めた多様な宗教・文化の共存」という図式になるのだろう。それなら、あまり風呂敷を広げすぎたり、脱線しすぎたりしないようにと願うばかり。

もはやヒロインの座にはいないように見えるインデックス(禁書目録)の人物設定は、どこかで活きてくるのだろうか…。男性キャラの場合には、主人公以外の脇役(ステイル、土御門)にも、格好いい場面を用意されているのに。