ミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』(トロント)

児童文学作家のロアルド・ダールの『チョコレート工場の秘密』をミュージカルにしたものが、今月からカナダ・トロントで上演が始まったので見に行ってきた。

この作品は、ティム・バートン監督によって『チャーリーとチョコレート工場』として2005年に英・米・豪合作で映画化されているので、そちらの方が有名かもしれない。

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ビジュアル的には、映画のファンタジー感を継承しつつも、音楽は別の作曲家が担当している。

ディズニーの映画/ミュージカルにあるような、「同じ楽曲」を期待していくと肩透かしにあう。

だが、ストーリーの進行は、ティム・バートンの映画版のような「クセの強さ」はない。

第一幕は、ウォンカのチョコレートの「ゴールドチケット」を引き当てる五人が順番に紹介され、主人公とも言えるチャーリーが当たりを引き当てて、祖父と工場の入り口に出向くところでクライマックスを迎える。

子役はチャーリーのみで、あどけなさを残した演技と、大人の中でも引けを取らない歌唱力に圧倒される。

他の子供たち、食いしん坊のオーガスタス、お金持ちのベルーカ、ガムを噛むバイオレット、ゲーマーのマイクは、大人が演じている。

ベルーカ親子がロシア系、バイオレット親子が黒人と、外見的にもやや戯画化されているが、さりげなくダイバーシティを感じさせるところが、カナダっぽい。

ちなみに、ベルーカはバレリーナの服装で登場し、劇中でもバレエの見せ場が満載。

第二幕は、これらの登場人物が、チョコレート工場の中で順番に「悲劇」を体験するのだが、最期に残ったチャーリーの心の美しさに、ウォンカが心を開くというエンディング。

ラストの、チャーリーとウォンカの二重唱はこのミュージカルのクライマックス。


客層は子供連れが圧倒的に多く、いわゆる「ファミリーミュージカル」を想定しているが、もちろん、大人が見ても大人なりに感じるところはある作品だと思う。

初演はロンドンのウェストエンドで、演出は「アメリカン・ビューティー」の監督のサム・メンデス。あの作品と同じように、ミュージカル版の「チャーリーとチョコレート工場」には、ミドルクライシス(中年の危機)とその克服を読み取ることができるように思える。これは僕の考えすぎかもしれないけれど・・・


映画版のあの「耳に残る」音楽が大好きな人にはちょっと物足りなさもあるかもしれないが、全体としては王道ミュージカルになっていて、美術も美しく、演出もユーモアに満ちていて、鑑賞後に清らかな気持ちになれる。

これはオススメしたい。

第7回アイドル楽曲大賞2018に投票した

第7回アイドル楽曲大賞2018に投票した。

第7回アイドル楽曲大賞2018



このランキング、以前に比べると「楽曲大賞上位に選ばれそうな曲に投票する」みたいな傾向が強まっている気がして、「俺の推した曲・アルバム・アイドルが上位に入ってSUGEEE」という達成感とか、「上位に入る曲・アルバム・アイドルを押さえている俺楽曲派()」という謎の自己承認みたいな「本末転倒」が起きているのかもしれない。

でも、そんな「優勝しそうなところに投票する」みたいなランキングはつまらないと思うので、あくまでも自分の好きなものにだけ投票したい。

僕の投票は・・・

メジャーアイドル楽曲部門

1位 Lightpool / sora tob sakana

そもそもインディーズ部門メジャー部門の区分にどんな意味があるのだろうかという懐疑的な気持ちになるが、どこにいようとオサカナの世界観に変わりなく決して期待を裏切らない。これからも新しい世界をどんどん切り拓いていってほしい。

2位 レインコートと首の無い鳥 / Maison book girl

ブクガは常に新しいものを見せてくれ、新しい音楽を聴かせてくれる。「アイドル冬の時代」に突入する中で、アイドルらしくなさがますますクールに見えてくる。一般の音楽好きにも自信を持ってお勧めできる作品。

3位 太陽がいっぱい / SOLEIL

懐かしさと新しさを同時に感じさせ、オシャレな雰囲気もかもすSOLEIL。背景にいる大人たちが、音楽やファッションやアートの世界観をしっかりと作り上げているのがわかるが、その濃い世界観にぴったりとハマっているのが貴重な存在。

4位 光の方へ / 鈴木愛理×赤い公園

「アイドル冬の時代」の中で「脱アイドル」「アーティスト」を志向する動きもあるが、鈴木愛理は「アイドルであってアーティストでもある」というポジションを確立。若い世代、同性の支持も根強く、「時代のファッションアイコン」としてポスト安室奈美恵の最右翼になった。

5位 この恋はトランジット / Someday Somewhere

テレ朝の「ラストアイドル」という番組企画は、「個人のバトルを重ねて最強のアイドルグループを作る」という原点から遠くまで来てしまった。2期生特にアンダーの扱いの酷さに加えて、1期のプロデューサーバトルというのも個人的には疑問を感じる点が多い展開になったが、副産物としてこの良い曲を残してくれた。

インディーズ/地方アイドル楽曲部門

1位 blue moon. / tipToe.

tipToe.は、今年大きく育ったグループの筆頭。とりわけ、既存のアイドルとは一線を画すような独特の境地に入ったのは7月の青山月見ル君想フでのコンセプトワンマンだった。月夜に感じる孤独を楽曲に封じ込めたようなこの曲はその象徴。

2位 心配性 / RYUTist

今やアイドルグループが「イイキョク」を歌うことは珍しくはなくなっているが、同じような手触りで品質の高い音楽をコンセプトをブラさずに続けているところはそこまで多くはない。RYUTistはその筆頭とも言える存在。きっと何十年経っても色褪せないエヴァーグリーンな曲を出し続けているのは奇跡とも思える。

3位 リンドバーグ / 桜エビ~ず

新曲を毎月出していくというチャレンジを続ける桜エビ〜ず。幅の広いイイキョクをしっかりとライブで聴かせる稀有な存在だが、中でもこの「リンドバーグ」はフェス向けで、大勢の人を巻き込んでうねりを生み出せるパワーを持っている。

4位 ロミジュリ / Fullfull Pocket

年初に主力メンバー2名が卒業するという事態を乗り越えて、3人の新メンバーを加えて生まれ変わったFullfull Pocket。楽曲提供の多田慎也のサポートを経たワンマンやツアーでは、新しいフルポケの魅力を余すことなく伝えていた。そんな「フルポケ新体制」を象徴する一曲。特にライブの楽しさは格別。

5位 fair wind / 九州女子翼

TIF2018で「見つかった」と言われた九州女子翼。そんなキャッチフレーズを脇においてみても、ワンマンの構成の面白さ、メンバーのキャラクターの強さ、そして、ライブの熱さは、癖になる強烈さを持っている。筑田楽曲に外れなしだが、中でもこの「fair wind 」は、指差しでレスをもらえるドキドキも加わって、忘れがたい味わい。

アルバム部門

1位 『magic hour』 / tipToe.

「見せたい世界がある、聴かせたい世界がある」というクリエーターの想い、それを受け止めて世界を表現するメンバーの志・・・そういった熱いものがじわじわと伝わってくる傑作。「売れそうな曲」「沸ける曲」とは対極にあるようなものだが、本棚の中で大事に飾っておきたい詩集のような作品。

2位 『alight ep』 / sora tob sakana

早くから独特の世界観を確立し、楽曲派の支持を得ていたオサカナ。メジャーレーベルに行くことで俗っぽくなってしまうのではないかという余計な心配をしていたが、杞憂に終わったと感じさせてくれた一枚。孤高の世界をこれからも切り拓いていって欲しい。

3位 『青春の音符たち ~Respect for 80's & 90's』 / ハコイリ♡ムスメ

時代の流行に流されず、あくまで「なつかしカワイイ」「ハードコアかわいい」路線を貫くハコムス。今年は初めて新メンバーを入れず、既存メンバーの練度を高め、ファーストアルバムを出し、ファーストコンサートを成功させた。来年早い時期に新メンバーの加入が期待されるが、メンバーが移り変わっていっても、どんな曲を歌っても、ハコムスはハコムスとして存在し続ける。そんなことを感じさせてくれるアルバム。

推し箱部門

Task have Fun

Taskは希望ー

アイドル冬の時代、多くのライブアイドルで卒業・解散のニュースを聞いた年だったが、その中で気を吐いているのがTask have Fun。2度の東名阪ツアーを成功させ、来年は3周年ワンマンを赤坂BLITZで、そして秋には中野サンプラザでワンマンを開催するといううれしいニュースを聞かせくれた。

メンバーのかわいさ、楽曲の力強さ、ライブの楽しさ、それらが三位一体となったTaskをこれからも注目していきたい。




こんな感じ。


毎年思うけど、インディーズ/地方アイドル部門は、10曲くらい投票したい。

Ui -白岡今日花 “初” 写真集-

Task have Funの白岡今日花の”初”写真集、「Ui」を入手した。

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撮影は青山裕企さん。

「スクールガールシリーズ」で有名なフォトグラファーで、生駒里奈を撮った写真集「君の足跡」は僕のフェイバリット。

作品展に足を運ぶだけでなく、今年5月には「アイドルの撮り方」というテーマのワークショップ的なイベントにも参加していて、親しみも感じている方。

今回、白岡今日花を撮った「Ui」は全64ページから成る。

テイストは最初から最後まで一貫していて、ローカル線の駅、鉄道、木造校舎、音楽室などノスタルジックなモチーフをふんだんに取りいれている。

私服、制服風ブラウス、制服風ポロシャツなどの衣装も、どことなく懐かしさを感じさせるものになっている。

モデルの白岡今日花も、いかにもアイドルらしい健康的な「ニコパチ」な表情のショットは控えめ。

どことなく憂いを帯びていたり、プライベート感を感じさせる力の抜けた表情であったり、ドキッとするような「近さ」を感じさせるものであったり・・・

まるで「同じ学校にいた記憶の中の美少女」のような雰囲気を漂わせている。


Task have Funのライブでの白岡今日花の魅力は、とにかくしゃべり倒す圧倒的なMCにあったりするんだけれども、この作品の中での彼女はどちらかと言えば、寡黙そうな美少女。

ルックス上の魅力である、黒くてツヤツヤの髪、透き通るように白い肌、そして薄く茶色がかった瞳を、青山裕企は綺麗に捉えていて、「さすが」と唸らされた。

僕の一番好きなショットは、見開きで体育館で横たわっている顔のアップ。

自然光を受けた白岡の瞳が、まるで琥珀のように褐色を帯びて透き通っていて、強く印象に残る。


発行は彼の立ち上げた出版レーベル「ユカイハンズパブリッシング」からHMVでの限定販売で、1000部限定。

「今の白岡今日花の魅力」を、永遠の時間の中に封じ込めたような逸品。早めに手に入れておきたい。

www.hmv.co.jp