僕らが二階堂ふみに期待するものは、自由奔放な発言であり、型破りな行動であり、斬新なファッションである。
一方、僕らが川口春奈に期待するものは、優等生の言動であり、品格のある立ち居振る舞いであり、そして清楚な服装である。
二階堂ふみが、写真集『進級できるかな』の中でジャージ姿で変顔で高円寺を闊歩するのに対して、川口春奈は、写真集『haruna』の中でセーラー服で黒髪で音楽室に佇む。
未来が良くて、過去が悪いわけではない。もちろん、その反対に、過去が良くて、未来が悪いわけではない。
しかし、僕らが過去を「古き良きもの」として振り返るときに、あるいは、「こんな過去を過ごしたかった」と夢想するときに、そのノスタルジィの中心にいるのは、たぶん、川口春奈のような女の子なんだろうと思う。
『haruna』の中の川口春奈は、僕らの心の中で夢想されていたが、現実にはどこにも存在しないような、あの頃の学年No.1アイドルの姿を体現している。セーラー服を着ていても、ワンピースに着替えても、ビキニになっても、僕らがあの頃に憧れたような少女そのものとして目の前に現れる。フォトグラファーの長野博文は、まるで写真を眺める僕が彼女の目の前にいるような臨場感のある光景を、優しい視点で見せてくれる。素晴らしい写真集だと思う。
川口春奈は過去である。だが、それは、どうやっても手に入れることのできなかった理想の過去のように思われる。この点で、より正確に言えば、「川口春奈は仮定法過去完了である」というべきなのかもしれない。
it could have been...彼女の屈託のない笑顔は、僕にそんな想いを起こさせる。
- 作者: 長野博文
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