みんなと同じでいいならもう君はいらないのさ―チューリヒ美術館展@国立新美術館展

必死で 必死で ゴージャスを気取る
そうやって誤魔化していくナーバス
Don't be afraid Don't be afraid
みんなと同じでいいなら もう君はいらないのさ
ひめキュンフルーツ缶パラダイム」)

国立新美術館チューリヒ美術館展を観に行った。

f:id:SHARP:20141111003329j:plain

(公式サイト):チューリヒ美術館展


印象派からシュルレアリスムまで」という副題通り、序盤に現れる幅6メートルにも及ぶモネの睡蓮の大作から始まって、ナビ派表現主義キュビスム抽象絵画シュルレアリスムと、クロニクルに見る者を導いていく、まるで西欧近代美術の教材のような手堅い展示。

個人的に最も印象に残ったのは、フェルディナント・ホドラーの「真実、第二ヴァージョン」。

f:id:SHARP:20141111003813j:plain

ホドラークリムトと並び称される世紀末を代表する画家だが、スイスから出ることなく、活動を続けた。この「真実、第二ヴァージョン」は、リズミカルなダンスを思わせるようにも見えるし、一方で、没個性な男性陣に対して中央の女性がダメ出しをしているように見える。「皆と同じでいいなら もう君はいらないのさ」と言わんばかりに。

スイスを代表する作家ということではこのホドラージャコメッティが巨頭かと思うが、展示の最後には、ジャコメティによる矢内原伊作の肖像画が飾られていた。作品自体も、ジャコメッティの彫刻の創作の過程を見るような思いのするもの。ジャコメッティと矢内原の友好関係のように、スイスとと日本の関係の発展を願うチューリッヒ美術館と国立新美術館の思いさえ感じさせた。この作品を最後に置くという心憎い演出のおかげで、心地良い余韻を味わうことができた。

他と比較するのは気が引けるが、同じ国立新美術館で催されていたオルセー美術館展が、コレクション上仕方ない面もあるとはいえ、過度に印象派に偏っていたのと比べると、バランスの良さが光る。しかも、見ごたえのある傑作が多かった。これはお勧めしたい。

また、国立西洋美術館では、フェルディナント・ホドラー展も開催中。これも観に行きたくなった。

(公式サイト)

フェルディナント・ホドラー展/【東京展】 2014年10月7日(火)~2015年1月12日(月・祝) 国立西洋美術館/【兵庫展】 2015年1月24日(土)~4月5日(日) 兵庫県立美術館