小野不由美の十二国記シリーズの4作目『風の万里 黎明の空』を読んだ。
人は、自分の悲しみのために涙する。陽子は、慶国の王として玉座に就きながらも役割を果たせず、女王ゆえ信頼を得られぬ己に、苦悩していた。祥瓊は、芳国国王である父が簒奪者に殺され、公主の平穏な暮らしを失くし哭いていた。そして鈴は、蓬莱から流され辿り着いた才国で、苦行を強いられ、蔑まれて泣いていた。それぞれの苦難を負う少女たちは、幸福を信じて歩き出すのだが──。
自分にとってはこの物語の主人公は陽子なのだが、久しぶりに陽子が王となった慶国にスポットライトが当たる巻となった。
自身の王としての適性に疑いを持つ陽子のほか、祥瓊と鈴という不遇な女性が登場。「本当の自分」を求めてぐるぐると悩みながら苦労を味わう彼女たちの姿は、まるで少女マンガのよう。
文庫で上下巻900ページくらいの大作だが、小野不由美の筆力は終盤にかけて爆発する。畳みかけるような怒涛の展開と胸のすくようなクライマックス。
陽子かっこいいよ陽子。ここからどうなっていくのか。十二国を股にかけるような更にスケールの大きな展開になるのか。
と思っていたら、新潮文庫としては、短編集を間に挟むらしい。なんという焦らし。
- 作者: 小野不由美,山田章博
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2013/03/28
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