東京都の条例改正案

19世紀のイギリスの思想家のミルは言った。

酔っぱらうのは法的干渉に相応しい事ではありませんが、飲酒の影響で他人に暴力行為を振るった前科のある人が彼自身だけの特別の法的制限のもとに置かれるのは、完全に適法のことだと思います。

(ジョン・スチュアート・ミル『自由論』)

同じ頃、アメリカ合衆国では、酔っ払うことに法的に干渉するどころか、酒の製造・販売・輸送に干渉する「禁酒法」が成立。結果は、犯罪抑止につながるどころか、かえって酒が地下組織によって取り扱われることで反社会的組織を強化する結果となり、最終的には合衆国憲法の改正によって終止符を打たれた。

さて、いまここ東京では、都が表現に関する禁酒法ともいえる「青少年健全育成条例の改正案」を導入したがっている。目下、漫画家、出版社等が反対の姿勢を示しているが、議会多数の民主党は賛成の方向と伝えられ、このままでは可決されそうな勢いだ。

確かに一部に過激な作品があることは事実だが、そういうものを槍玉に上げて世論を喚起することで、政府が言論を統制して社会の自由を奪ってきたことは、過去の歴史が示す通り。暗い時代に入ってしまうことは避けねばならない。