これはガチだ〜『リアルのゆくえ』

大塚英志東浩紀『リアルのゆくえ〜おたく/オタクはどう生きるか』を読んだ。

リアルのゆくえ──おたく オタクはどう生きるか (講談社現代新書)

リアルのゆくえ──おたく オタクはどう生きるか (講談社現代新書)

対談はプロレスだ。普通は。あくまで<見せ物=ショー>であり、「必殺技」をかけあっても、本当に殺してしまってはいけない。場外乱闘をしても、あくまで試合という枠組みの中に収めるものであり、競技場の外に出てはならない。

その点、ここでの大塚と東の対談はガチだ。二人は自分の必殺技を繰り出す意思はあるが、相手の技は決して受けようことはしない。これではプロレスにならない。あきれるような試合運び。

しまいには、大塚は競技場の外に出てしまう。出版直前に、対談の一部削除を求め、「あとがき」の掲載も拒否するというガチっぷり。もっとも競技場の外に出たのは『新現実』の編集から降りた東の方が先かもしれない。その意味では、この大塚の仕打ちは、そのときの意趣返しなのかもしれない。いや、野次馬根性失礼。

内容の方は、戦後左派的な問題意識を持ち「国家」「社会」に対する言論の力を信じている(ように見える)大塚と、ポストモダンなデータベース社会の中に生きていて個人の限界を悟っている(ように見える)東の、壮大なすれ違い。個人的には、年齢の近い東の方に共感した。大塚の言論は陳腐化しているし、東を挑発する口の聞き方も大人気ない。それに対して、東はマンガ・アニメ・ライトノベル・ゲームの事情をよく整理できているし、オタクが「動物化」しているという言説も説得力がある。

ということで、東浩紀ゼロ年代の著作をちゃんと読んでみようと思った。