壮大な凡作〜『20世紀少年 最終章』

あれ、堤幸彦ってこんなに下手な監督だったっけ―

3時間に迫らんとする上映時間の間ずっと、その思いが拭えなかった。ストーリーはほぼ原作に忠実。俳優陣はみな役になりきって熱演している。美術はどう見ても金がかかっている。尺も十分に長い。だが、この上っ面をなぞって核心を外したような空気はなんだろう。このリアリティのなさは。

大金を投じ、多くの才能と時間を費やし、全国の映画館で少なくない観客を動員して、こんな凡作を一大ムーブメントにしてしまうのだから、日テレはある意味で凄い。「ともだちの正体は誰?」という謎解きも、真相を知ってみれば、それってどうなんだというオチ。「世界を救うのも大事だが、一人の人間を救うのも同じくらい大事」というのはいかにも浦沢イズム。風呂敷の広げ方に比べてエンディングが地味なのもまた浦沢直樹の流儀なんだろうけど、大3部作のラストという割には爽快感のない、もっと言えばちょっと後味の悪い結末だった。

それにしても、カンナ役の平愛梨は女優としてずいぶん成長した。『笑う大天使』の柚子役のときは上野樹里関めぐみに押されていた*1が、この映画では大画面でアップになるのが相応しい堂々とした存在感を示していた。カンナのイメージが強いので次の作品が難しいかもしれないが、今後の役者としての活躍を楽しみにしたい。

*1:個人的にはあのときの眼鏡っ子もよかったけど