残酷なオタクのテーゼ

電車男』の各種コンテンツの大ヒット*1「により「オタク」がポピュラリティを獲得しているが、それでも「オタク」のイメージは人により異なる。

異なるイメージとは、たとえば特定の分野への半端ならざる傾斜であったり、特殊な嗜好であったり、コミュニケーションのやり方であったり*2、ある種のファッションの傾向であったり…など。しかし、誰もが納得するような明確な定義というものはなかなかないように思う。

安野モヨコのエッセイマンガ『監督不行届』は、庵野秀明をモデルにした「カントクくん」とその妻の「ロンパース」のオタク夫婦の生活を活写した傑作である。ずっと読みたいと思っていたのだが、今回ようやく読む機会を得て、一気に読んだ。随所に笑いを抑え切れないネタが満載。

しかし、最も印象に残ったのは、巻末に庵野が寄せたこの作品への感想だ。一部を抜粋。

(前略)

いわゆるオタクの内包的特徴を挙げると、内向的でコミュニケーション不全、つまり他者との距離感が適切につかめないとか、自己の情報量や知識量がアイデンティティを支えているとか、執着心がすごいとか、独善的で自己保身のため排他的だとか、会話が一方的で自分の話しかできないとか、自意識過剰で自分の尺度でしか物事をはかれないとか、ナルシスト好きだとか、肥大化した自己からなりきり好きであこがれの対象と同一化したがるとか、攻撃されると脆い等々、とかくネガティブイメージの羅列になってしまうのですが、そこらを有りのままに描いているのがいいですね。

(後略)

……相変わらずだな、庵野。

監督不行届 (Feelコミックス)

監督不行届 (Feelコミックス)

*1:決して『萌える英単語』のヒットによるものではないと思う

*2:本来は会話をしている相手に対する二人称が「オタク」だというのが語源だし