画狂老人卍になるまで―北斎展@名古屋ボストン美術館

幾多の困難を乗り越え画狂老人卍となった北斎

90歳近くまで生き、生涯を通じて作風を固定させず、3万点もの作品を生み出したアーティスト。こう書くと、まるでピカソのようだが、いつまでも若々しさを失わない姿勢はまさにピカソのようであり、追求した作風が海を越えて多くのアーティストに影響を与えたという点でも、彼に並び立つ存在とも言える。彼はやはり生涯を通じて何度も改号したが、最後のものが「画狂老人卍」だった。そのセンス。

今回、名古屋ボストン美術館で開かれている「北斎展」は、ボストン美術館から140点を迎えて開催されてる圧巻の展示。代表作である富嶽三十六景を初め、役者絵や洋風版画や組上絵などを展示。

公式サイト:ボストン美術館浮世絵名品展 北斎|HOKUSAI Ukiyo-e from the Museum of Fine Arts, BOSTON

圧巻のボリュームだが、やはり富嶽三十六景が素晴らしい。これはさまざまな場所から眺める富士山を描いたとされるが、見れば見るほど、当時の富士山ブームに乗っかりながら、デザイン性の高い風景画を追求したシリーズのように思われる。富士山の方はむしろ添え物になっている印象。

一通り鑑賞して、北斎の業績は高い山のようにそびえ立っていると思わざるを得ない。ただ、僕の興味ある女性の肖像画がほとんどないのは残念だった。これはごくごく個人的な好みに基づく感想だけれど。

名古屋ボストン美術館での北斎展は、3/23が最終日。この後、神戸、北九州と巡回し、9月には東京にもやってくる。ただし、「上野の森美術館」というどうにも微妙な会場なので、名古屋でじっくりと見られたのはよかった。