和製デクスター?―『聯愁殺』西澤保彦

探偵達が、依頼人から持ち込まれた殺人事件について、ああでもない、こうでもないと独自の推理を開陳して論理を戦わせるストーリー。

その推理のアクロバティックで荒唐無稽なところはまるでコリン・デクスターの「モース警部シリーズ」のようだ。モース警部は捜査初期段階で科学捜査によらず、飛躍した結論を伴う仮説を提示し、反証があると、あっさりと前言を撤回し、全く別の仮説を提示していく。

『聯愁殺』には何人もの探偵が登場してお互いに仮説の提示と反証を繰り返すが、最後には驚くべき真相が示される。これをフェアというべきかどうかは個人的にはちょっと疑問なしとしない。だが、デクスター的な迷走で、ありとあらゆる可能性が吟味された結果、このような可能性もあったはずという文脈で示されるのであれば、これはこれでアリだろう。

聯愁殺 (中公文庫)

聯愁殺 (中公文庫)