柴田元幸による『ナイン・ストーリーズ』新訳

『モンキー・ビジネス』の第3号が丸ごとサリンジャーの『ナイン・ストーリーズ』。これは「雑誌」とは呼べない気がする。「純誌」と呼ぶべきかもしれない。

モンキー ビジネス 2008 Fall vol.3 サリンジャー号

モンキー ビジネス 2008 Fall vol.3 サリンジャー号

各話のタイトルも、柴田先生の手にかかるとこの通り。村上春樹の新訳同様、カタカナが多い。

  • バナナフィッシュ日和
  • コネチカットのアンクル・ウィギリー
  • エスキモーとの戦争前夜
  • 笑い男
  • ディンギーで
  • エズメに――愛と悲惨をこめて
  • 可憐なる口もと 緑なる君が瞳
  • ド・ドーミエ=スミスの青の時代
  • テディ

どの話もそれぞれにユニークだが、あえて共通点を探すとすれば、「都会」「孤独」「コミュニケーション不全」「居心地の悪さ」「悲しみ」という感じか。

基本的には当時のニューヨーカーが読んでこその作品だと思うが、現在の日本の都会で生活する人にもそれなりに共感できる部分はあると思う。でも、個人的には、レイモンド・カーヴァーの短編の方が好みだ。