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見事な下降スパイラル〜『エドモンド』公演感想

「人生を踏み外すなんて簡単だ」
作者のデイヴィッド・マメットのそんな声が聞こえてきそうな演劇『エドモンド』を青山円形劇場で鑑賞した。

SIS company inc. Web / produce / ƒGƒhƒ‚ƒ“ƒh`EDMOND by David Mamet`

演出はいまが旬の長塚圭史、主演は八嶋智人。他に、小泉今日子、大森博史、酒井敏也、小松和重、中村まこと平岩紙明星真由美が出演。こうしてみるだけでも豪華なキャスティグ、前売り券はかなり早い段階で完売となっている人気公演だ。

八嶋智人はもともと確かな演技力には定評があるが、堂々と主役を演じられることをこの作品で示した。小泉今日子は、最初の場面の立ち上がりが不安定だったが、中盤では打って変わって圧倒的な演技力を見せつけ、目を見張らされた。「演劇の女神」が降臨したかと思わせるような、大竹しのぶ張りの熱演だった。

さて、個人的に応援している平岩紙は、残念ながらそれほど出番は多くなかったが、登場したシーンではいずれも個性の強さを見せてくれた。が、贔屓目に見て、もっといろいろな役をこなせる可能性を持っていると思う。

青山円形劇場は文字通り360度が舞台であり、観客席との距離も近く、もう本当に手が届きそうなところで俳優の演技に接することができる。あまりに近すぎて、ときに役者の放つオーラに中てられてしまうくらいだ。

内容的には、人間が誰しも持っているダークな部分が暴走するとどうなるかというもので、ときに胃がきりきりと痛くなるシーンもあった。下降するスパイラルを演じる空間として、「正面」が幕ごとに変わる円形の舞台を選んだのが意図的であるとしたら、お見事としかいいようがない。そして、舞台との近さが、この痛さを何倍にも増幅していた。いずれにしても「ここではないどこか」に憧れることの危険性を浮き彫りにしている。エドモンドのように「ここにいる」ことの意味を見失うことは大きな犠牲を伴うことになりかねない。その可能性を想像すれば、いまここにいることは、決して悪くないのかもしれない。多少の自戒の念を込めて。