東京藝術大学 公開シンポジウム「国立美術館・博物館は稼がなければ再編? 機器の時代を迎える文化政策」

目下の美術館・博物館界隈の最大の関心事と言っても過言ではない「収益化」。

東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科(GA)主催の公開シンポジウム「国立美術館・博物館は稼がなければ再編? 機器の時代を迎える文化政策」に行ってきた。

メンバーは以下の通り、

【登壇者】
問題提起者:太下義之(東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科客員教授)
討議者:逢坂恵理子(元国立新美術館長)
難波祐子(東京藝術大学キュレーション教育研究センタ−特任准教授)
司会:毛利嘉孝(東京藝術大学副学長・大学院国際芸術創造研究科教授)

太下さんからは、今回文化庁から示された中期目標がそもそも達成可能なものなのか?という根源的な問題提起がなされた。

達成するためには、来館者数を増やす、入館料を引き上げる(含む二重価格の導入)、経費を下げるといった方法があるとしたうえで、人数をこれ以上増やすのは現実的ではない(鑑賞できる環境維持ができない)、二重価格導入はあり得るがブロックバスター展が中心で貧弱な常設コレクションでは難しい、経費削減を継続的に続けると体制維持ができなくなるということで、解決策としては「ミュージアム版ベーシックインカム」が考えられるのではないかということだった。また、財務省と文化庁の力関係のような話にもおよび、ロビーイングのための組織化のアイデアも出された。

逢坂さんからは、ICOMの定義によれば、博物館は「非営利」の常設機関であるべきで、生涯にわたる教育を担う施設であり、その国のアイデンティティを示すものであるべきで、いまの状況は「日本型国立美術館制度の限界」を示すものではないかということだった。今後、より「持続可能性」が重要になっていく中で、全人教育、AIデジタル化時代に五感を駆使して美術と接することができる美術館の意義が市民の間でも正しく評価されることが望ましく、寄附に対して税制優遇制度などを用意することが効果的ではないかという話だった。

難波さんは、「稼げない展示は価値がないのか」という茂大から出発し、国立博物館が中期目標に縛られれば、それは地方や私立の他の美術館にも波及し、「稼げる展示」優先のプレッシャーがかかり、実験的な企画・共同プロジェクトなどができにくくなるのではないかという懸念表明に行きついた。アクセシビリティ、教育、人材育成など、短期的な収益につながらないことの重要性も強調され、このままでは「国立大学の独立法人化」の二の舞になるのではないか、そうならないために「なぜ美術館が必要か」という問いに基づいて市民の理解を得ていくことが必要だとされた。

会場は満員で、藝大界隈の関心の高さをうかがわせるもので、「中期目標」なんてとんでもないという受け止めの中、これを機会に抜本的な課題について向き合って考えていこうというポジティブな意見もあった。

自分も自分なりに向かい合って、考えをまとめるようにしたい。