ドラマ・プレミア『背の眼』

道尾秀介のデビュー作『背の眼』原作の2時間ドラマを観た。

公式サイト:BS日テレ|ドラマ「背の眼」番組サイト

この作品はホラーのようでいてミステリー。福島の山村で連続して起きる「背中に眼が写った人が自殺する」という超常現象を、心霊現象探求家という肩書の真備庄介(渡部篤郎)が現地に行って調査する形でストーリーが展開する。物語の語り手にはホラー作家・道尾秀介(平山浩行)が登場する他、真備の義理の妹である特殊な能力を持つ助手の北見凛(成海璃子)も、事件の解決に一役買う。

ガイ・リッチー版『シャーロック・ホームズ』や京極堂の作品群とは違って、謎解きによって全てが合理的に説明されるわけではない。この辺のミステリとホラーのバランスは、綾辻行人の『Another』などの世界観に近い。これはこれで最近の流行なのだろうと思う。

実写ドラマ版では、俳優陣がいずれも魅せてくれた。浮き世離れした雰囲気を漂わせる渡部篤郎、道尾秀介本人に似ているような感じのする平山浩行、そして神秘的な深みを湛える成海璃子と、主要3人が絶妙のコンビネーションを構成している。山村の事件の関係者を演じた竜雷太本田博太郎佐戸井けん太らはいずれも重厚な存在感を示して、ドラマを引き締めた。また、道尾秀介自身がカメオ出演するという遊びもあった。

逆に今ひとつだったのは全体の演出。全体の半分くらいのところで成海璃子の入浴シーンが挟まれるなど、2時間ドラマのフォーマットに忠実に作られてはいるが、全体として、昭和のホラー・サスペンスと比べるとどこか物足りない。それは「映像のおどろおどろしさ」なのか「演出のケレン味」なのか「不気味さを表す特殊効果」なのか分からないけれども。

BS日テレ初の長時間ドラマということだが、個人的な感想を言えば、ホラーの雰囲気作りにさらに工夫があると思うものの、ぜひシリーズ化して欲しいと思わずにいられない作品だった。

背の眼〈上〉 (幻冬舎文庫)

背の眼〈上〉 (幻冬舎文庫)


背の眼〈下〉 (幻冬舎文庫)

背の眼〈下〉 (幻冬舎文庫)