欧米から見た日本―「もてなす悦び展」(三菱一号館美術館)

三菱一号館美術館で開催している「もてなす悦び展」を鑑賞した。

公式サイト:三菱一号館美術館

19世紀後半の欧米で花開いた「日本ブーム」(ジャポニスム)をテーマとする食器を中心とした特設展。ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館を彷彿とさせる内容。もちろんスケールは相当に小さいが、その辺りは、コレクションの質や、展示の工夫でカバー。

構成は以下の通り。

  • あさがおの間
  • 欧米の世紀末を彩った日本
  • もてなしの品々が誕生するまで
  • 私だけのジャポニスム

日本らしい花といえば一般的には菊ということになるのだろうが、この展示はあさがおから始まる。だが、その美しいこと。日本的な控えめで繊細な美しさということではあさがおに軍配があがる。色といい、形といい、柔らかそうな花びらといい。

食器は、日本製のものを研究して、欧米でコピー的に制作されたものが並ぶ。どこかしら色合いが派手だったり、形が主張しすぎていたりしているのが面白い。だが、欧風のテーブルにセットされている展示を見ると、日本の文化が「流行として」欧米のリビングでどのように受け入れられていたのかが良く想像できる。

明らかに着物の影響を受けて生まれた「ティー・ガウン」など、優雅なシルエットと派手な刺繍の組み合せが、日本人にとってはむしろ新鮮に感じられる。

総じてユニークな展示だった。西欧の有名アーティストの作品を借りてくる展示も面白いが、今回のように「西欧から見た日本」を一堂に集めるのも、また彼らのアーティスト的な感性が理解できるように思う。ミントンやロイヤル・ウースターやティファニーなどの食器は、ほとんどが三菱一号館美術館の所有のもの。当日の三菱財閥の財力を改めて思い知るとともに、このような「西洋と日本の架け橋」的な役割も、商社・海運を担って発展してきた三菱グループらしいといえなくもない。

ちなみに、美術館の建物のすぐ隣の中庭では、打ち水ではなく「水蒸気放出」が行われている。灼熱の中に一服の涼。この展覧会もそのように感じた。