黒川芽以のデビュー曲

黒川芽以のデビュー曲『泪の海』を買った。

彼女はアイドル的要素も持っているものの、持ち前の演技力からすると、TVドラマ・映画・舞台をメインとした展開が中心になると期待していた。だから、このタイミングでのレコードデビューはやや意外感があった。

曲を聴いてみると、ミディアムテンポのバラードポップス。アコースティックギターの伴奏を主体に、ストリングス、ベース、ドラムス等が控えめに加わるという感じ。アイドルのデビュー曲というよりは、むしろ女優が表現活動の一環としてリリースする曲という風情で、黒川芽以というアーチストが持つイメージに似つかわしく、ファンの期待に応えるものだと思う。

個人的に意表を突かれたのは、彼女の歌声。とても透明で、高音部で伸びやかになる。表現力はあるが、声量で聴き手を圧倒するようなものではなく、繊細でどこかはかなげ。彼女の演技のときの発声からは、もっと迫力のある太い声も想像していたのだが、いい意味で裏切られた。

派手さはないが、聴けば聴くほど心の中に染み入ってくるような曲と歌声。どちらかというと、誰にも邪魔されずに一人でじっくりと部屋で聴いていたい、そんな感じの曲。地味さゆえにヒットチャートを賑わすようなことは決してないだろうが、「売れるために自分に似合わないことをしようとは思わない、でも耳を傾けてくれる人にはじっくりとメッセージを伝えたい」そんな彼女のポリシーが感じられるような気がした。

泪の海

泪の海