少女歌劇団ミモザーヌの夏公演「ジャングルレビュー」を観に、大阪なんばのYES THEATERへ。
2018年に一期生メンバーを募集してから6年、今後のリニューアルが発表された。最近の言葉でいえば「現体制」としては最後になる公演。
今までは、オープニングやフィナーレを除くとユニットやソロが順番に繰り出されるようなステージだったのに対して、今回は第一部で一期生から五期生まで全員がステージに同時に登場。
ここまでの活動の集大成となるような完成度の高さを見せた。
第一部
「生きること」をテーマとしたミュージカル仕立ての構成。
1 オープニングレビュー
幕開けは、日本舞踊による「花笠音頭」。
北村姉妹の津軽三味線の演奏に合わせて、着物姿のメンバーが美しい所作で華麗に舞う。
トラックは民謡をベースとしながらヨーロッパ風のクリシェが入り、笠の花はミモザになっている。
このあたりの和洋の絶妙な折衷がミモザーヌならでは。
続いて、すずきみあいソロで「イヨマンテの夜」。
過去の公演でも評判のナンバーだが、今回のテーマである「大自然の中で生きるということ」にもぴたりとはまっている。
2 夜明け
ジャングルに生きる色々な動物たちが登場する。
リス、ウサギ、フラミンゴ、シマウマ、そして黒ヒョウ。
それぞれのメンバーの持ち味に加えて、役になり切る演技・表現に見入ってしまう。
特に黒ヒョウには荒々しい迫力があって、こちらが食べられてしまうのではないかとドキドキさせられる。
3 ジャングルレビュー
そんな大自然のジャングルに踏み込んだのは、一人のハンター。
笠置シヅ子の「ジャングルブギ」「私の猛獣狩り」を歌いながら、ジャングルの動物たちを見つけ、あわよくば持っている銃で狩ろうと狙う。
ミモザーヌのオリジナル曲「情熱フラミンゴ」「夕陽に笑うシマウマ」を、それぞれの動物に扮したユニットが披露。
一期生から四期生・五期生までのメンバーが同じユニットでパフォーマンスしていて胸が熱くなる。
入団と卒団を繰り返す中で、少女歌劇団ミモザーヌというカンパニーの「魂」はこのように継承されているのかと。
4 海の広さが
45億年の地球の歴史の中で、海が生命を育んだ。そして生まれた生命は長い時間をかけて世代交代を重ねて複雑に進化し、多様な種に広がっていった。
人類が登場するよりも前から海の中、森の中には多くの動物が暮らしてきた。そんな悠久の歴史を感じさせるナンバー。
5 自然の掟
マイケル・ジャクソンやジャネット・ジャクソンを彷彿とさせるR&Bの楽曲。
こういう曲ではミモザーヌのダンスのスキルの高さがはっきりと分かる。
自然界の掟は、弱肉強食。
生きるために食べることに、良いも悪いもない。
6 悲しんではいけません
生きるために食べることに良いも悪いもないといっても、ジャングルは死と隣り合わせ。
だが、それは生態系の中で食物連鎖の均衡が保たれるための必然とも言える。
だから、悲しむのではなく、それを受け止めていくことで先に進んでいける。
フォークギターの弾き語りが似合うような、しっとりとした懐かしい昭和のフォークを思わせる楽曲。
7 星空の彼方へ
夜に空を見上げると、星が見える。
星がたくさんきらめているのを見ると、大きな宇宙の中でこの地球という空間がとても小さなものであること、長い時間の中で一つの生命の寿命がとても短いことを、改めて感じずにはいられなくなる。
生命は儚い、でも、だからこそと尊い。そんなメッセージを感じるバラード。
ステージの上に並んだ動物たちが夜を過ごす姿がそれぞれに個性があるのも見どころ。
8 いのちはめぐる
そして、物語は大団円へ。
ミュージカル「ライオンキング」の「サークル・オブ・ライフ」をオマージュしたかのような「いのちはめぐる」。
「さあ、生きよう」と力強く歌うメンバーの姿に、聴く者のの魂も揺さぶられ、奮い立たせられる思いがする。
第二部
9 One Night Only
ちばひなの・ともだりのあ・ひろせしづくの3人による21世紀の和製スプリームス。
ミモザーヌらしい清潔さがありながら、表現の大人っぽさもあちこちに滲んでいて、見ているだけでドキドキしてしまう。
10 りるはのダイナ
さかもとりるはと言えばMC。MCと言えばさかもとりるは。
この曲では、MCだけではなく、歌とダンスと愛嬌を武器にして、広いステージを縦横無尽に動き回って観客を虜にすることを示してくれる。
11 白虎隊
前回公演の殺陣からさらに進化して、今回はミモザーヌ初となる剣舞。
剣舞を特技とするたなかあかりに加えて、みやはらにこ、こじまさいかが、凛々しくも哀しい会津藩の少年剣士を演じる。
しろみゆのソロ歌唱もこの世界観に引き込む説得力を十分に持ち、これまたミモザーヌでしか見られないような演目。
12 サウスポー
昭和歌謡の一つの頂点を極めたといってもいいピンクレディーの「サウスポー」。
アイドルのキラキラオーラ溢れるちばひなのをセンターに、ひろせしづく、ともだしづく、みつふじまりん、おおためいによるカバー。
メンバーそれぞれの個性が出ていて、目が二つでは足りなくなるくらい、あちこち見たくなってしまう。
13 どうにもとまらない
山本リンダの代表曲の一つ「どうにもとまらない」。
彼女は、単に「昭和歌謡」というジャンルで括ってしまうのをためらわれるような、日本離れしたセンスのあるアーチスト。
難しい彼女のパフォーマンスを、ともだりのあが持ち前のルックスとフィジカルをフルに解き放ってオリジナルに全く負けないカバーを披露。
14 夜来香
ミモザーヌで卒団した先輩が歌ってきた「夜来香」。
どちらかというと大人なイメージの強い曲だが、四期生・13歳のすずきよりほがソロで堂々と歌唱。
歌唱力もしっかりとしていて、未熟さに逃げず、パワーに頼らず、ニュアンスをしっかりと聞かせてくれる。
ステージに立つ姿にも、異国情緒を感じさせる魅力があって、いい意味で驚かされた。
15 All That Jazz
ミュージカル「シカゴ」で有名なナンバー。
最初はスローにしっとりと始まり、途中からギアチェンジしていく難しい曲だが、ひばひなの、ひろせしづく、たなかあかり、こじまさいかが魅力的な表現を見せてくれる。
三期生・四期生がこういうジャズ曲で活躍する姿を見られる日が来るとは、という感動を禁じ得ない。
17 Fly Me to the Moon
しろみゆ、ともだりのあの二期生コンビ。
それぞれの持つ強い個性の歌声が、ときに共鳴し合い、ときに思いがけないゆらぎを生む。
うっとりと聴き入っていると、深い世界に入り込んで出られなくってしまうかのよう。
18 Welcome sing sing sing
すずきゆい・いわむらゆきね・すずきみあい・ちばひなのの一期生4人による「Welcome sing sing sing」。
ミモザーヌ最初の公演はコロナで無観客だったが、それ以来の披露になる。
最初18人いた一期生がいまはこの4人だけになった。
当時の衣装を着たパフォーマンスを生で見られて、コロナで失われた時間が取り戻せたような気がした。
19 聖戦士/セイント・ガールズ
ここからは新曲が続く。
まず、こじまさいかをレッドのセンターにして、おかべはなこブルー、かとうさやピンク、ともだしづくイエロー、すずきよりほグリーン、5人が色違いの衣装をまとってフォーメーションを形作る。
まるでセーラームーン、プリキュアを彷彿とさせる戦闘少女グループ。
こんなに尊い聖戦士たちの前では、どんな悪も逃げ出さずにはいられないだろう。
20 小さな夢を握って
次の新曲は、シティポップ風のバラード。
すずきみあいが持ち前の表現力でじっくりと聴かせてくれる。
パワーだけではなく、微妙な表現を味わうことのできる稀有なボーカリストとしての魅力を堪能。
21 終わったンだから
三曲目の新曲は、フラメンコ曲。
とは言っても、フラメンコのリズムを取り入れながらも、和声はシティポップ風でアーバンなアレンジ。
過去何度か披露されたフラメンコはラテン・スパニッシュの色合いが濃かったが、この曲は今まで以上に和洋折衷のミモザーヌらしさ全開。
ちばひなののフラメンコ姿を目に焼き付けた。
22 言問橋
最後の新曲は、1980年代半ばから90年代前半の雰囲気のするバラード。
飯島真理の「愛・おぼえていますか」やZARDの「負けないで」を思わせる懐かしさを感じる。
いわむらゆきねのソロで、彼女の持つやさしさと健気さがボーカルの中でも遺憾なく発揮されていて、心に染みてくる。
23 ありがとうございます
ミモザーヌのオリジナル曲。
観客への感謝の気持ちを伝えるこの曲だが、6年にわたる活動に一つの区切るを付けるこのタイミングでの「ありがとうございます」に、胸がいっぱいになる。
言葉にならない。いや、こちらの方こそ「ありがとうございます」というべきかもしれない。