あれよあれよという間にスターダムを駆け上がっているVaundy。
武道館ワンマン2daysは完売どころかプラチナチケットとなり、「見切れ席」を追加販売することに。
楽曲の幅の広さ、若者の心に届く歌詞、そして多彩な表現力を持つパワフルな歌唱力。
加えて、ファッションやデザインワークも時代のアイコンとなる勢い。
そんな武道館2daysの二日目に当選したので、時代の目撃者になる高揚感とともにライブに行ってきた。
場内はアリーナから1階・2階の360度が満席。
「見切れ」のないようにという配慮からか、大掛かりな舞台装置もなく、スクリーンもない。
言ってみれば「ギミックなし、素手で勝負」というところ。
Vaundyは登場するといきなりポップなキラーチューン「恋風邪に乗せて」からパワー全開。
観客も総立ちでイントロかクラップ、そしてサビで手を振る一体感。
平日の夜とあって、学校帰り、会社帰りのような出立ちの人もどちらかというとライトな層が多いように見える。
MCもほとんど挟まず、曲がどんどん繰り出されていく。
途中で衣装を変えたりということもなしに、それぞれの曲に合わせて時に熱く、時に切なく歌い上げていくVaundy。
アップテンポの曲では割と激し目に踊ったり、場内の全方向の観客に届くようにと、ステージを上手や下手に動いたり、下から上まで目線を送ったり。
どこまでもパワフルで、そしてどこまでもタフ。
マスク着用で声出しができない会場の熱量をもっともっと上げようとMCでの煽りも欠かさない。
場内のファンはやや大人しめに見えたが、それでも「踊り子」「napori」「東京フラッシュ」「tokimeki」などの人気曲では会場のテンションも高くなったように感じた。
途中挟まれた「極楽浄土」はじっくりと聞かせるバラードで、Vaundyのボーカルの表現力が傑出していると改めて思わされ、まるでGRAPEVINEのような侘び寂びの世界観の「走馬灯」では、若さに似つかわしくないと思わせるようないぶし銀のような味わい深い苦味も感じさせてくれた。
終盤、来年末のアリーナツアーが発表され、盛り上がりが最高潮に達したところで「怪獣の花唄」。
金銀に煌めく吹雪が舞う演出で、まるで楽園に来たようだった。
アンコールは「しわあわせ」、そして今日は特別にという前置きの後、今夜配信予定の新曲がドロップされる。
新曲は、歌詞を聞く限りやや哲学的というか、社会性を帯びたテーマのように聞こえた。
どちらかといえば、個人の内面を抉るような歌詞の多かったVaundyが、新しいステージに進んでいくような予感を感じた。
23曲を一気に浴びるようなライブ。
Vaundyのタフでパワフルなステージに圧倒され、生で聴くボーカルの表現力に魅せられた。
楽曲的には、「これがVaundyサウンド」というものがあるというよりは、古今東西の色々なパーツやフレーバーを巧みに組み合わせてイマドキ感を出していくというのが彼のセンス・持ち味なのかなと思った。そういう点では、昔の渋谷系の方法論に近いものがあるという感じ。
だが、彼の言葉と歌声は大いなる武器であり、この先さらに多くの人の心を動かしていくだろうと確信するワンマンだった。
可能性しかない。
それが今のVaundyだと思った。
家に帰って「新曲」の「mabataki」のMVをチェック。
このMVの監督もVaundy自身が手がけるというのだから、その才能は恐ろしいとしか言いようがない。
映像のイメージは、真っ先に藤井風の「帰ろう」を思い出させるものだったが、藤井風の方が「現世から来世へと旅立つ人々を見送る」というような普遍的で超然としたテーマなのに対して、Vaundyの方は「社会に背を向ける自分が、相互に理解者となるかもしれない運命の相手と出会う」というパーソナルな物語になっている。
SNSでは「正しさ」が求められる息苦しい社会をそつなく生きているような若者も、どこかでマッチングできる相手を求めている孤独を抱えていたりするわけで、このVaundyの新曲の「ボーイミーツガール」的な物語は、現代に生きる個人が求めているものを的確に差し出しているなと思う。
これを計算ずくで作り出して世に問うていると思うと、この若さで本当に底が見えないというか、末恐ろしい才能だと言わずにはいられない。