納得感のあるエンディングが際立つ〜『コーダ あいのうた』(2021年、アメリカ・フランス・カナダ、シアン・ヘダー監督)

ミモザーヌのファンミーティングで話題になって、広井王子が「ボロ泣きした」とまで行っていたので、さっそく『コーダ あいのうた』を観に行ってきた。

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聴覚障害者の両親と兄のいる家庭に唯一の健常者として生まれた主人公。

家族の生計は4人が総出で行う漁によって賄われていて、自らも学業よりも家業を優先せざるを得ない状況。

そんな中、学校で音楽の授業を指導する教師に、歌の才能を見出させる。

が、耳が聴こえず「音楽」というものが分からない肉親に理解されず、また漁業でも通訳の役割から抜けらないジレンマを抱えて、悩んでいくが・・・というストーリー。

経済的に困窮した家庭に生まれながら、非凡な才能を見出されていくというプロットは『リトル・ダンサービリー・エリオット)』などにも通じるもので、王道といえば王道。

この作品に関しては、音楽の持つチカラと、映画手法の駆使と、何よりも家族愛に泣かされた。

エピソードを積み重ねて必然性のある結末を見せてくれるカタルシスの素晴らしさ。

やっぱりエンディングの「納得感」というのは、良い映画作品にとっては大事なこと。

「X年後・・・」的な文字テロップの後に、思わせぶりなカットを入れて、「どういう意味かは見た人の想像にお任せします」みたいに終わらせる手法を近年良く見かけるけれども、あれは「受け手に解釈を委ねる」というよりも「作り手としての責任を半ば放棄している」と思っている。

なので、この『コーダ あいのうた』の終わらせ方にはある種の潔さを、作り手として責任を引き受けるコミットメントの意思も感じた。

これはいい作品。

アカデミー賞作品賞受賞も頷ける。

今年のアカデミー賞は周辺情報ばかりが報道されてしまった感があるが、本作はあるべき評価を受けて受賞した真っ当な作品だと思った。