燃え殻の原作小説の映画化。
2020年の現代に生きる46歳の主人公が、フェイスブックで昔の彼女”かおり”のアカウントを見つけてしまうところから物語は始まる。
仕事、人間関係、私生活・・・
現在は、過去に選び取った結果の延長の上にある。
主人公の過去を数年おきに遡るように映画が進んでいく。
その「昔の彼女」と出会う場面はなかなか描かれず、当時の東京の風俗とともに主人公の「履歴」が明らかになっていく。
そしていよいよクライマックの1990年代へ。
小沢健二の初のソロアルバム『犬は吠えるがキャラバンは進む』に象徴されるような渋谷系サブカルチャー愛好を通じて出会う主人公と彼女。
ギクシャクした出会い、サブカルを通じた親交、そして渋谷のホテルで二人きりで過ごす時間・・・
タワレコ、WAVE、ポールスミスなどのアイテムに初期の小沢健二の楽曲が散りばめられていて、懐かしいやら恥ずかしいやら。
水色の日産パオでドライブに行くシーンのコラージュが、ある意味で走馬灯のようだった。
現在に戻ってきたところで、「そして時は2020」と小沢健二の『彗星』になるのだが、結局、主人公は元カノの”かおり”を忘れようとしても忘れられずにいるということなのだろう。
”あの頃”に青春を生きた人にはズンとくる作品。
「あー、水色の日産パオでオザケン流してドライブしたい」と二度と戻れない青春を懐古しつつ、でもおじさんには似合わないよな・・・
と思ったが、森山未來は20代から40代半ばを違和感なく演じているのがどんなに凄いことかと改めて思う。
そんな凄さを持っていながら、観るものに「ああ、これは自分だ」と感情移入させてしまう魅力もある。凄い俳優。
そして”かおり”を演じている伊藤沙莉は、いくら劇中で「私ブスだから」と自虐的に描写されていてもスクリーンではかわいすぎて、そして美しすぎる。
これは「振られてからずっと引きずる永遠の元カノ」の原型みたいなものだ。
オシャレ映画でもないし、感動巨篇というわけでもないけれども、あの頃を生きた”大人”には「うわあああ」という感情を呼び起こしてくれる作品。