Original Loveってもう30周年なのか。
僕が最初にOriginal Loveを知ったのは、1988年。
ソニー時代のピチカート・ファイヴに田島貴男が入ってきたのがきっかけだった。
前作『カップルズ』とは大きく雰囲気が変わり、ソウルフルになったこの時代のピチカート・ファイブが個人的に一番好きで、特に『Bellissima!』の『惑星』や『女王陛下のピチカート・ファイヴ』の『夜をぶっとばせ』のもたらす高揚感は他の音楽では得難いものだったことを覚えている。
田島貴男がピチカートからOriginal Love に戻って1stシングル『DEEP FRENCH KISS』、1stアルバム『LOVE! LOVE! & LOVE!』を出したのが1991年。
今から30年前。確かに・・・
1stアルバムは洗練された大人の色気に溢れたサウンドで、形容する言葉も見当たらず「とにかく聴いてみて」と友人に勧めまくっていたが、『接吻 kiss』や『プライマル』がドラマの主題歌に使われてメジャーになったのはその後だった・・・
そんなOriginal Loveの30周年『What a Wonderful World with Original Love?』が出たので一通り聞いてみた。
全12曲。
そこで去来したいろいろな思いを雑多ではあるが残しておこうと思う。
01.原田知世「朝日のあたる道 (Album Version)」
トップバッターは爽やかな朝日のような癒し系ボーカル原田知世。
彼女はすっかりこの辺の界隈のミュージシャンズアイドル的な地位を占めるようになった。
清楚な雰囲気で優しく歌われるとおじさん(俺)は死んでしまいそう。
02.長岡亮介「ディア・ベイビー」
えっと長岡亮介って誰だっけと思ったら、東京事変の浮雲さんでしたね。
アレンジをグッと変えててまさかのカントリー。
よもやよもやだ。
しかし意外性があっていいし、ここまでカントリーとして完成させる才能と自信を感じる。
このくらい変えた方が原曲の可能性を拡張しているようで、トリュビュートの意味があると思う。
03.椎名林檎「LET'S GO!」
Original Love の原曲の持っていた夜の妖しい雰囲気を再現、いやさらに濃厚にして漂わせる。
そこに色香の香る林檎節が乗って完全に自らのモノにしている。伴奏のひたすらにジャジーな雰囲気も素晴らしい。
20年代版「丸の内サディスティック」な香りもありつつ、これぞOriginal Loveの林檎流解釈。
04.SOIL&"PIMP"SESSIONS & KENTO NAGATSUKA (WONK)「MILLION SECRETS OF JAZZ」
これは強力なタッグ。全体の雰囲気は初期Original Loveにかなり近いし、KENTO NAGATSUKA のボーカルも当時の田島貴男の歌い方を彷彿とさせる。原曲へのリスペクトを感じながらも、アレンジ全般は20年代の現代の先端的なお洒落さがある。
05.斉藤和義 & Rei「JUMPIN' JACK JIVE」
斉藤和義 & Reiか。サウンド的にはかなり斉藤和義ワールドでありながらも、Reiを入れて掛け合いで歌うことで原曲の持つメッセージ性がよりはっきりと伝わってくる。ボーカルも演奏もまるでライブのような熱いノリが伝わってくる。エモい。斉藤和義はボーカルの節回しも彼自身のものになっているけれども、それ以上に長いギターソロもまるで自分の楽曲にして楽しんでいる様子が伝わってくるよう。
06.TENDRE「IT'S A WONDERFUL WORLD」
とても現代的な音作りで、DJが聴かせてくれるチルのような感じの心地よさ。今の基準で「お洒落な音楽」を求めるとこういうサウンドになるのかと刺激を受ける。ボーカルもオリジナルの熱量を一度濾したようなさっぱり加減で、このクールさもイマドキ感がある。
07.小西康陽「夜をぶっとばせ」
ピチカート時代のこの超名曲のカバーを手がけられるのは、やはり小西康陽。そして小西はこの大事な曲に、田島以外の別のボーカリストを立てることをせず、ミュートトランペットをフィーチャーしたインストとして仕上げて来た。このことがかえって田島のボーカルの存在感を感じさせ、以前のように二人がこの曲を特別なものだと大事にしていることが浮き彫りになっていると勝手に思ってまた胸が熱くなる。
08.Yogee New Waves「月の裏で会いましょう」
原曲はソウルフルで熱くて黒っぽいグルーヴを持っているが、ここでYogee New Wavesは、まるでJ-POPのように爽やかで耳あたりの良いサウンドに転化している。なるほどこういう解釈もありか。バンドのカラー、ボーカリストの持ち味で綺麗に昇華されている。
09.東京事変「プライマル」
超名曲。イントロはオリジナルをしっかりとなぞって尊重しているが、そこから新しいサウンドが展開されていく。東京事変ならではのボーカルのリレーも楽しめる。名義は違うものの椎名林檎が12曲中2曲を手がけているのはうれしいし、その2曲の仕上がりがまた別の味わいを持っているのがいい。
10.YONCE (Suchmos)「ショウマン」
これは個人的にはサプライズ。YONCEのボーカルはSuchmosの時のアーバンな感じとはまた少し違っていて、田島貴男の濃厚なしゃくりをオマージュしていて「おお」と思わされる。モノマネになりそうなギリギリ手前というか。サウンドもシンプルなピアノ弾き語りに近い雰囲気。
11.Original Love & Ovall「接吻」
時間が経てば経つほどに色褪せないどころか、評価が上がっていき、カバーされまくる稀有な名曲。
このアルバムでいったい誰がこの曲をやるのかと思っていたが、Original Love & Ovall名義か。なるほど。
この曲はMVも出てるが、聴けば聴くほどに、田島貴男は現代的なトラックでこの曲にもう一度新しい魂を吹き込みたかったんだろうと思われる。あの頃の時代性を帯びた気恥ずかしさみたいなものがいい感じに抜けていて、エバーグリーンな名曲のエッセンスがしっかりと残って生まれ変わったよう。
12.PSG (PUNPEE, 5lack, GAPPER) & Original Love「I WISH / 愛してます」
これが最後の曲。
原田知世でしっとりと始まり、PSGのラップで終わる30周年。
このアルバムの最後がこれというのは、田島貴男まだまだ過去の人になってないな、まだまだ熱い。やる気満々。好奇心旺盛。若い。30年で殿堂入りなんてとんでもないと言わんばかりだ。
全12曲、何度も聴いてしまう。
個人的には今の『DEEP FRENCH KISS』も聴きたかったというわがままも感じつつ、でも名盤と思う。ジャケットもかっこいい。