先月末の『ルル』に続いて、東京二期会のオペラ鑑賞へ。
あの宮本亞門が演出を手がけたということもあってか、土日のチケットは完売。
ということで、初日公園へ。
モーツァルトらしくキャッチーな曲もあるが、彼のオペラの中では、物語としては抽象的・観念的とされている。
今回は、そんな原作の抽象的な物語や謎めいた登場人物は、ゲーム世界の中で動くキャラクターとなり、主人公はミッションをクリアする役回りとなった。
序曲では、現代に生きる家族持ちの疲れたビジネスマンの姿が描かれ、そんな彼がひょんなきっかけでゲーム世界の中に入り込むという導入になっていて、とてもわかりやすいエンターテイメントになっている。
「愛と理性の対立と超克」みたいな宗教じみたテーマも、女性性・身体性を強調した一派と、猿を手下として使う脳の肥大した一派の掛け合いで戯画的に描かれる。
ステージが奥もよく見えるように傾斜しているあたりもミュージカルっぽかったり、プロジェクションマッピングを活用した演出も21世紀的な新しさを感じた。
有名な古典を現代の「往きて帰りし物語」としてアレンジし、エンタメにぐっと寄せた宮本亞門の演出も冴えていたが、聴き慣れたオーソドックな楽曲をいきいきとエモーショナルに奏でるギエドレ・シュレキーテの指揮もこの作品に新しい命を吹き込んだ。
演者もそれぞれキャラクターに馴染んだ歌唱が良かったが、個人的には“夜の女王”を演じた安井陽子が圧巻だった。
これでモーツァルトの有名オペラは『コジ・ファン・トゥッテ』『フィガロの結婚』『ドン・ジョヴァンニ』『魔笛』を観たことになる。
なかなか海外でオペラを観られないこのご時世に、世界で通用するこのような舞台を提供していくれる二期会には感謝しかない。