昨年ネクストブレイクと言われていた藤井風だが、今年はホンダのCM曲「きらり」で一気に認知度が広がった。
以前「藤井風のブレイクの鍵はTikTokでのバズ」と書いたが、今回の「きらり」のヒットで若者のファンも一気に増えた。東京オリンピック開催を機に、エンタメの”風向き”が変わることを見越したであろう「日産スタジアム」でのFreeライブ。
去年の武道館ワンマンで、もやは武道館さえ藤井風には狭すぎるということが明らかになった今、いきなりのスタジアムライブは決して無謀ではなく、むしろ順当とさえ思えた。
ところが、である。
緊急事態宣言は延長され、オリンピックは無観客となり、デルタ株の蔓延で陽性者は上昇するというピンチ。
この”Free Live"をどうするか苦渋の決断があったことは想像にかたくないが、日産スタジアム7万キャパを無観客にして開催するという決断となった。
いろんな想いがあったと思う。本人にもスタッフにも。
しかし、この無観客LiveはYoutubeで生配信され、7万人どころか17万人の視聴者を記録した。
無料の強さもあるが、彼の音楽性への注目、知名度などがそこまで上がっているというのに改めて驚く。
音声・映像はなんとあのミュージック・スラッシュ。
山下達郎のライブ配信を手がけたことで知られるこだわりの技術サポート。
1時間にも及ぶ名ライブで、まさに藤井風の中から音楽が生まれ、それを指先で奏でながら、歌い上げていく至福の時間。
なんと今でもアーカイブで見られるという太っ腹。
もはや藤井風が起こした新しい風といっても良い。
感染対策と音楽業界の存亡のどこでバランスを取るのか、色々な模索がされた2021年夏。
ノーマスクを煽って密集したライブを開催した某フェスへの批判が高まる風の中で、藤井風のFree Live無観客配信は、「一つの姿」を示したように輝きを放っている。
もちろんこれが理想で最適解である、などと単純なことをいうつもりはない。
有観客ライブに代わるものはないのだから(事実10月からはツアーを予定している)。
しかしながら、目まぐるしく風向きの変わった2021年の夏、藤井風の取組は音楽業界に大きな足跡を残したと言える。
もはやネクストブレイク、ではない。
藤井風は、いま大きな風に乗った。
この先、どこに向かって飛び立つのか、目が離せない存在である。