イデア的な「女性の強さ」を描き切った『ワンダーウーマン 1984』(パティ・ジェンキンス監督、2020年、アメリカ)

ガル・ガドット主演『ワンダーウーマン』(2017年)の続編。

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前作が第一次世界大戦中のドイツとイギリスの戦いを舞台にしていたのに対して、本作では核軍拡の最中にある米ソの冷戦を舞台としている。

ストーリーは、細部の詰めの甘さが残ると言えば残るのだが、むしろそれがおおらかさを伴った感じに仕上がっている。

1984年であるという設定はそこまで活かされていない感じがするし、ビランもまあ小物感が拭えない。

そして、バトルもパワープレイというよりは、人間の良心に訴えかけるというような精神的なもの。

ダークナイト』のようなシリアスかつ神経質な作品とは異なり、評論家筋よりも大衆受けをより意識した王道展開で、2020年代の新しい風を感じた。

DCエクステンデッド・ユニバースとしても、こういう感じなっていくのかなと予想。

肉体的な強さ、精神的な高潔さ、外見の美貌を武器にしたワンダーウーマンのヒーロー像は、「ウーマンリブ」とも呼ばれた初期のフェミニズム的な価値観に徹頭徹尾貫かれていて、原点回帰を思わせる。

イデア的な女性の強さというべきか。

主演のガル・ガドットの魅力は盤石。

イスラエル出身で兵役経験もある彼女が、中東での戦闘シーンを演じるところは「凱旋」的な意味も感じて胸が熱くなった。

そして、彼女の少女期を演じるリリー・アスペルの輝きが凄い。

今後の作品にも出ていくのだろうけど、個人的には『ヤング・ダイアナ』のスピンオフ作品を見てみたくなった。