一瞬一瞬でも強く輝いてる〜Fullfull Pocket One-Man Live「WHAT IS POP?」@東京キネマ倶楽部

どんなにそう高い壁だって 君となら超えていけるんだ
一緒に駆け抜ける日々は 一瞬一瞬 でも強く輝いてる
(Fullfull Pocket「moment」)

2010年代前半、数多くのライブアイドルグループが生まれ、アイドルシーンは文字通り「百花繚乱」の様相を呈した。

気軽にライブを観に行ける劇場公演やCDショップでのイベントが平日休日を問わず開催される中、僕は「今日はどこに行こう?」と迷いながら現場を回した。

いい時代だった。

今にして思えば。

僕がこれまでに通った現場数では、ハコイリ♡ムスメ、アイドルネッサンス、つりビットがトップ3だけれども、アイドルネッサンスは2018年に、つりビットは2019年にそれぞれ解散、ハコムスも2019年秋に活動休止に入ってしまった。

2010年代のライブアイドルシーンに僕が求めていた「楽曲が良くて」「ライブが熱くて」「メンバーがかわいくて」「特典会が楽しい」という正統派アイドルグループは今やものすごく少ない希少種になっている。

そこでFullfull Pocket。

Fullfull Pocketになってからは4年だけれども、前身のからっと☆から通算すると7年。

文字通り、楽曲派()アイドルグループとして2010年代をサバイブしているグループ。

ということで、フルポケのワンマンに行ってきた。

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会場は東京キネマ倶楽部

今までは、節目のワンマンでは表参道や白金高輪などの場所を選んできたフルポケが初めてワンマンを開催する会場。

鶯谷という場所がグループのイメージに合うかななどという余計な心配は、会場に入ってみるとすぐに消えた。

「POP」「CLASSIC」というイメージをよりゴージャスに見せてくれそうという期待に変わった。

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フルポケのライブは「全身で楽しむ」ことができるもので、前回・前々回のワンマンではいずれもVIPチケットを取って最前エリアで沸き上がった。

今日は趣向を変えて「全体をじっくり観よう」と2階の「プレミアムシート」を確保。

下手寄りの正面からメンバー全員を見られる場所から鑑賞することした。

開演から「シンデレラPOP」「Pop Classic」と、今日のライブのタイトル「WHAT IS POP?」の答を提示するようなセトリ。

2019年のアイドル楽曲大賞のランキングで健闘しそうな「音nanoco」も含めて、このグループが「ポップ・ミュージック」を追求していることがよく分かる。

そして初恋メドレー。

<恋愛>は、フルポケの音楽世界を構成する重要な要素、とばかりに「ドットアオゾラ」「フタリアオゾラ」のペア、冬の恋の芽生えを歌う「ときめきマフラー」から「きみがだいすき」をメドレー構成で。

ワクワクとした気持ちを味あわせてくれる楽曲に、メンバーのボーカルと観客のコールの応答が彩りを添える。

2階席から眺めるその光景は文字通り「古き良き2010年代の全盛期のライブアイドルシーン」そのもの。

今は、ここ以外ではなかなか楽しめないものになってしまっているもの。

「フルポケは、10年代の最後に残った正統派アイドルグループかもしれないな」と思う。

ここでメンバーがステージから一旦退場。

正面スクリーンにはメンバーへのインタビュー動画が映し出され、「POPって何?」という質問にメンバーが答えていく。

「POP」って分かるようで分からないというか、説明できそうでなかなか難しいと思うけれども、どのメンバーも自分の言葉で語っているのを見て、フルポケのグループのパフォーマンスの方向がブレない秘訣がそこにあるのかなと感じる。

白系のドレスの新衣装に着替えたメンバーが2階のサブステージから一人ずつ登場。

眩しい。

プリンセスみたい。

衣装を含めたこういうルックスも、フルポケの「王道感」をさらに増している。

そこで披露される楽曲は、アレンジがロック調になった「darlin'」、エレクトロフレーバーの入った「flower flower」、そしてアコースティックギターの情熱的なリフが印象的なラテン調「プロットガール」。

アレンジが変わっただけではなくも、ダンスの雰囲気も変わったので、全く新しい曲に生まれ変わったように聴こえる。

僕はオリジナルの「flower flower」のギターポップな感じが物凄く好きなんだけども、このリアレンジ版はこれはこれで10年代後半の音がするというか、フェスなんかの大きなステージで聴いたら映えそうだな、と感じた。

ここで「5人目のフルポケ」(勝手に命名)こと、サウンドプロデューサーの多田慎也が登場。

ピアノの演奏に合わせて、メンバーが歌い上げていくというアコースティックパートへ。

「今を生きる」「真昼の花火」を、アコースティクバージョンならではのボーカルの表現力で歌い上げる。

ピアノだけでの伴奏でメンバーの歌声を改めて聴くと、みんな声量があることを実感する。

でも、単なるパワープレイではなく、繊細にピアノ・ピアニッシモで表現するところはぐっと聴き入るような歌声に、そして、ハーモニーを聴かせるところではお互いに呼吸を合わせるような息遣いに。

「ああ、今俺は音楽を聴いている」「猛烈に音楽を楽しんでいる」と実感する。

いつものライブよりも、歌詞の意味を感じて・・・、あれ・・・涙が出てくるよ、という感じ。

これが音楽のチカラ。

ライブ後半は、「カンフー乙女」「キラメキサマー」「ロミジュリ」「流星Flashback」とエモーショナルな曲が続き、会場のテンションもどんどん上がる感じ。

アイドル音楽は、ジャンルとしてはとっくの昔に「なんでもアリ」になっていて、今では「どんな変化球を投げるのか」という感じになっているけれども、フルポケは、あえていてば「ど真ん中にストレートの豪速球で勝負」という王道路線。

逆に言えば、そういう王道アイドルソングに愚直なほどにこだわるからこそ、熱烈な支持を受けているのだろう。そう思う。

次は、多忙の新曲披露。

「桃色セツナ」と曲フリをされた後、メンバー4人が円形に陣取り、広瀬みのりの音取りに宇敷陽南、桜木ゆふがハーモニーを重ねる。

音程がちょっと微妙に聴こえたのは僕だけではなく、広瀬がやり直しを要求して2度目の音取りへ。

ハーモニーにが綺麗に重なったところで、石井栞がリードのメロディーをソロで歌い出し、そこにアカペラで三声ハモが重なる。

美しい。

そして、切ない。

歌い出しの後にオケが入り、正面スクリーンにはデザイン化された歌詞が流れる。

「桃色セツナ」は。秋冬のしっとりとした情景の中で終わった恋を想うという、フルポケには珍しいラブバラード。

雰囲気的には小泉今日子の「木枯らしに抱かれて」のような切なさ。

間奏では長めの台詞(ポエトリーリーディング)もあって、メンバーの少し成長した姿を感じさせる。

決してライブで「沸かせる」ようなタイプの曲ではないが、アイドルライブの楽しみ方はそれだけではない。

じっくりと聴き入ることで楽曲の世界に入るという味わい方もある。

そんな時間だった。

拍手喝采の後、この曲を含むシングルを来年リリースすることが告知される。

多くのアイドルが消えていった2019年を超えて、2020年にもフルポケの活動が見られる僕らは、やっぱり「恵まれてる」と思うべきだろう。

ラストスパートは「moment」「自分革命」、そしてアンコールで「おひさまスプラッシュ」からの「SINGER-SONGダイバー」で、フルポケのワンマンライブは幕を閉じた。

最初から最後まで一貫して楽しくて、それが何よりも「音楽の楽しさ」がずっと通奏低音のように流れていて、こんなライブはなかなかない。

終演後の特典会には行かなかったけれども、プレミアムシートの特典の写真集「#オフポケ」にメンバーからのメッセージを頂いていて、心満たされた気持ちで帰路に着いた。

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そう言えば、フルポケは新メンバーを募集していたけれども、今日はその辺の「新メンバー」「新体制」に関する発表や匂わせは特になかった。

これだけ現メンバーのスキルが高くなってしまうと、なかなか新メンバーを入れるのも難しいのかもしれない、と勘ぐったりしてしまう。

まあでも、舞台裏の詮索はこのくらいにしておこう。

今はただ、2010年代をサバイブした王道アイドルのフルポケのライブがこれからも見られるという、その事実だけでも僕らは希望を感じていけるのだから。

(セットリスト)

1 シンデレラPOP
2 Pop Classic
3 音nanoco
MC自己紹介
(「初恋」メドレー)
4 ドットアオゾラ
5 フタリアオゾラ
6 ときめきマフラー
7 きみがだいすき
動画〜衣装替え
(リアレンジ)
8 darlin'
9 flower flower
10 プロットガール
多田慎也ピアノ)
11 今を生きる
12 真昼の花火
MC
13 カンフー乙女
14 キラメキサマー
15 ロミジュリ
16 流星Flashback
17 桃色セツナ(初披露)
MC告知
18 moment
19 自分革命
(アンコール)
en1 おひさまスプラッシュ
en2 SINGER-SONGダイバー