二度と無い季節が 通り過ぎて行くよ
何もない感覚 登っていく階段
明日はどこだ
(Base Ball Bear「17才」)
明日はどこだ―
昨日、アイドルネッサンスは池袋東武百貨店スカイデッキと新宿タワレコで「YOU」のリリイベを行った。
僕にとっては、最後のリリイベとなるはずだった。あの言葉を聞くまでは―
新宿タワレコのミニライブには大勢の人が集まった。そこで最後に披露された「Good day Sunshine」では、いままで経験したことのないような一体感とうねりが会場に現れた。とにかく凄いライブだとしか言いようがない。
直後に特典会のために現れたメンバー。新井乃亜は「みなさんにお話したいことがあります」と切り出して、感極まった様子で集まった観客にお礼を述べた。続いて、石野理子も「明日の錦糸町タワレコは、みなさんと一緒にファイナルを迎えたいので、絶対に来てください」と泣きながらもしっかりとした口調でメッセージを伝えた。
明日はどこだ―
僕には既に別の予定が入っていた。あえて詳しくは書かないが、前売り券も買っていた。いつもなら、複数のアーティストのスケジュールを事前に把握してから、いちばん意義のありそうなところを選んでいく。効率よく、効果が最大限になるように。
でも、のあねぇとりこぽんの言葉は、一晩じゅう僕の頭の中に響き続けた。
二度と無い季節
先約のあった表参道の駅まで行く。春の空気が街を支配する。前物販の行列を眺めていたら、やはり今日僕のいるべき場所はここではないという想いが強まっていく。
錦糸町に行かなきゃ。
逆向きの地下鉄に揺られて
君が見えなくなる夜は
COOLになんてふるまえない
12時を君なしで閉じたくない
(大江千里「YOU」)
今日を君なしで閉じたくない―
「君だけを、君だけを、離さない、離さない、Woo―」と、僕の胸のドラムが「YOU」を熱演している。
錦糸町につて錦糸公園に着くと桜が満開。「二度と無い季節が通り過ぎて行くよ」。そう、この季節は二度と無い。アイドルネッサンスの初めてのリリイベファイナルは、今日だけなんだ。だから、ここに来るべきだったんだ。
コンコースを抜け出すように、僕は錦糸公園を抜け出した。タワレコまで、あと少し。
ブチ上げるネッサンス!
錦糸町タワレコには開演1時間少し前に到着。既に30人くらいのファンが集まっている。
メンバーが登場してリハーサル開始。リリイベのリハーサルの中は、ギャラリーへのアピール的な意味合いを持たせているアーティストも多いけれど、アイドルネッサンスの場合には、客席をほとんど意識せず、本番に向けての入念なポジションチェックが中心。
そして12時30分。いよいよリリイベファイナルの開始時間。
手狭な錦糸町タワレコの店内は、ほぼアイドルネッサンス目当ての人でぎっしりと埋め尽くされている。なんか凄いことが起こりそうな予感がしてくる。
僕も上着を脱いで臨戦態勢へ。
昨日素晴らしい挨拶を聞かせてくれた乃亜ちゃんに敬意を表して、のあねぇ生誕Tee。乃亜ちゃんの直筆のイラストには「日本征服するネッサンス」って書かれているけれども、今のアイドルネッサンスの勢いは、本当に日本を征服できそうなくらい。
一曲目は、デビュー曲の「17才」。
「リリイベ最終日です!」「手拍子をお願いします!」と集まった観客にアピールするメンバー。
リリイベ続きで疲れがたまっているはずなのに、それを全く感じさせないどころか、むしろさらに輝きを増している。
そして、応援するファンの方も、ハンドクラップやコールがびしっと揃っていて、会場を一つにするようなグルーヴを生んでいる。
自己紹介に続き、のあねぇのMC。
「私達、実はタワーレコード錦糸町店さんに来るのは今日が二回目なんですけど、前回来たときは(3月15日)、まだ桜がつぼみだったのが、それが今日はお店の桜が満開ですよ」
「この2週間、頑張っている間に桜がこんな風になってて、私達もリリイベ頑張ってたんだなあ…なんて(笑)(会場から拍手)」
「ほんと、みんなで話していたんですけど、「二度と無い季節が通り過ぎて行くよ」っていう感じですよね(笑)」
うまいこと言われた(笑) でも、自分達の頑張りと成長を実感しているような感じも見え隠れしていて、実に頼もしかった。
今日は、会場を巻き込んで、「一週間の感謝を込めてブチ上げるネッサンス!!」を一緒にやるということで練習が始まる。
「ブチ上げー」では、みなさんも声を合わせて腕を上げて、そこから、親指を立てて「ルネッサーンス!」といって、今日は一緒にジャンプしちゃいましょう!」
と、のあねぇが言ったところで、スタッフから「ここはジャンプ禁止です」との注意が(笑) メンバーだけのジャンプに切り替わって、ブチ上げーーーーーールネッサーーーンス!!
ここから三曲連続で。「Good day Sunshine」「恋する感覚」「ドカン行進曲(己編)」を。
いずれもシングルのカップリング曲。この一週間でのメンバーとファンが築き上げた一体感が凄くて、音楽を楽しむっていうのはこういうことなのかと思わされる。特に「ドカン行進曲(己編)」の沸き方は最初に観た頃とは全然違っていて、メンバーも、ファンも、何か吹っ切れたようなテンション。
クラップをしたり、短いコールを入れたり、フリコピをしたり…楽曲の世界感を損なうことなく、メンバーを応援しながら、誰も他の誰かの邪魔になったりしない。これこそが理想の現場ではないだろうか。
まりんちゃんから、今夜の「新宿BLAZEの@JAM」に出演するということと、明日はAKIBAカルチャーズ劇場での定期公演「アキバで高まるネッサンス!!」の千穐楽の告知。今夜の方は行けないけど、明日はチケットを押さえてある。
いよいよ最後は新曲のタイトル曲「YOU」。
原曲の大江千里の作品をリスペクトした上で、「ルネッサンス」の名前の通り、新しい息吹が吹き込まれている。
「時代(とき)の速さの中で きみだけを きみだけを 離さない 離さない」というパートを聴きながら、朝の焦燥感と情熱を思い出していた。
そう。アイドルネッサンスの音楽は、聴く人の奥底に眠っている何かを確実に呼び戻す力がある。
だから、僕は今日ここに来たんだ。
演奏が終わり、いままで聴いたことがないような拍手喝采が沸き起こる。メンバーの笑顔にもやりきった感じがある。退場するメンバーを労うような大きい拍手は、やがてリズムを生んでアンコールへ。
最前列のファンが「どかーんと一発、アンコール!」と音頭を取って、大きな歓声でアンコールを求めるコールが始まる。アンコールは予定になかったようで、運営がメンバーのいる控室に駆け込んでいくのが見える。
打ち合わせが終わった様子でPAが戻ってきて、メンバーも再登場。感謝の言葉を述べた後、いまやアイドルネッサンス自身の代表曲の一つになった感のある「YOU」を全力パフォーマンス。完全燃焼したライブだった。
そういえば、昔からの音楽好きの友人が、このリリイベに3日連続で現れ、今日はCDも買っていった。彼いわく「優れたソングライターが必ずしも優れたシンガーとは限らないから、名曲ルネッサンスには意味があるだろうと思っていたけど、現場で観てみたら想像以上に説得力があった」と。
彼のように、情報にアンテナを張って、フットワークよく現場を回れば、それほどお金をかけなくても、いい音楽に出会う機会に溢れている。「最近いい音楽がなくて…」なんて嘆く人は、老人による「若者論」と同じ落とし穴にはまっているだけ。頑迷さを捨ててオープンになれば、世界はもっと楽しい。そう、アイドルネッサンスの現場のように。
(セットリスト)
1 17才
2 Good day Sunshine
3 恋する感覚
4 ドカン行進曲(己編)
5 YOU
(アンコール)
en YOU
特典会~恋する感覚
ライブを終えて特典会に現れたメンバーは、胸にタワーレコードの名札を付けている。
以前、タワレコ新宿でのインストアのときに、「タワレコの一日店員になりたい」と言っていたメンバーたちのうれしそうなこと。まいなちゃんは「一日店長になりたい」と言っていたけれども、店長用の名札だったかどうかは確認できなかった。
僕はCDを二枚買って特典券を入手し、一枚をチェキに、もう一枚をメンバーとのお見送り会に使うことにした。
まずはチェキ。
理子ちゃん来た!しかも、ハートマーク作って微笑んでいるとか、これは大当たりだよ!(当社比)
続いてお見送り会。
今日の並びは、「あだ名の少ない順」ということで、「まりん→のあ→こよい→まいな→かな→りこ→ななこ」という順番。
お見送り会は、凄い行列が出来ていて熱気が凄かった。時間はやや短めだったが、リリイベファイナルの労いの言葉をメンバー全員にかけることができた。
まりん:お疲れさま!「ドカン行進曲」楽し過ぎたー!
のあねぇ:(Tシャツに指差されて、「わたし、家でいつも着てるんですよ!」ってうれしそうに話してくれる)
こよちゃん:お疲れさまでした。楽しかったよ!
まいな:(猫のポーズでぴょんぴょん飛びならがら)「明日のAKIBAカルチャーズも行くにゃ!」
かなぼん:リリイベ大変だったと思うけど、最高に楽しかった!
りこぽん:「17才」も「YOU」も本当に好きです。明日の高まるネッサンスに行きますね!
なっこ:なっこの笑顔に元気をもらいました!これからも応援しますね!
はあ。なんて満たされた気持ちになるんだろう。
でも、まとまってアイドルネッサンスメンバーと会える日々はいつまでも続くわけじゃない。
「それじゃ、また明日ね」と手を振った僕の胸に、甘い痛みが走っている。これを書いているいまでも。
君とただいるだけで この胸に走る甘い痛み
瞳のメリーゴーランド うるうる回り出すよ
「それじゃ、また明日ね」だなんて 手を振るからつのる甘い痛み
(Base Ball Bear「恋する感覚」)
これが「恋する感覚」なのかもしれない。