ルミネの動画CMのどこに欠陥があるか

ルミネが力の入った動画CMを公開した(現在は公開中止)。

「LUMINE Special Movie 第1話」と題された動画は、上司の男性から別の女性と容姿を比較された主人公の女性が「変わらなきゃ」と奮起する内容。

まあ、容姿を比較する時点でジェンダー方面の問題意識を惹起するのはもちろんのこと、上司の男性が「需要が違う」っていうのも女性蔑視的な観点を思わせるし、男性の立場からしても「世の中のオトコの大半はこうなんでしょ?」っていうステレオタイプな描き方も気になる。

そして、何よりも「ルミネにお金を落とすのは結局は異性ウケをよくするため」っていう結論。いや、まだこれ「第1話」なので、結論かどうかは分からないけれど、まあ、そう連想させるエンディングは、ルミネで買い物をする常連の女性にも反感を買いかねないものだった。

もちろん、途中で比較対照として登場する巻き髪・スカートの女性に負けず劣らず、ひっつめ・ボーダーシャツ⁺パンツの主人公が魅力的で、最後には輝いていくことは最初から分かっているわけだけど、セクハラ上司の一言で奮起するという時点で、感情移入が難しい存在になってしまっている。

ということで、倫理的に問題であるという点以上に、ファッションを売り物にするべき会社としてはセンスがダメダメであるということがはっきりしてしまった。

ルミネはこの動画をすぐに公開中止にした。僕には当然の帰結と思える。が、ルミネのお知らせを見る限り、何を問題だと思ったのかどうかはっきりとしない。

この度は、弊社の動画においてご不快に思われる表現が
ありましたことを深くお詫び申し上げます。
今後はこのようなことのないよう、十分に注意してまいります。
株式会社 ルミネ

「JRからの天下りおじさんが多いからこうなる」っていう声もあるけれども、たとえば伊藤春香(はあちゅう)とかいう広告出身の女性もだいぶズレたことを言っているので、年齢や性別は関係ないのかもしれない。

これに対して批判のリプもだいぶあったが、それに対してのつぶやきがこれ。

なんで批判が「好感度を上げるため」という発想になるのか疑問。まあ、意図してか意図せずか分からないけれど、話題になることで得をするブロガーの炎上商法とは距離を置こうと思う。

いずにしても、広告関係者としては、「誰かに(あるいは時代に)媚びる」という発想から抜けきれないのかもしれないけれども、それはもうだいぶ古い価値観で、最近の「自分の内面を充実させる」という欲望を十分に捕捉できていないように感じる。あるいは、捕捉できていても、表現としてそこに刺激を与えるに至っていない。

この点こそが、今回のルミネのCMの最大の欠陥であると思う。