アーティストへ向かう階段―東京女子流「TGS Acoustic Vol.2」

アイドルとアーティストの違いは何か―定義に正解はなく、人によってまちまちだが、僕の定義はシンプル。自分で表現したいものがあるのがアーティスト。他人から与えられたものを表現するのがアイドル。

「楽曲が素晴らしく、アイドルの枠を超えた」などという表現があるが、たとえ素晴らしい楽曲が提供されていても、本人のあずかり知らぬところで作られてあてがわれたものを素朴に歌っているのであれば、それはアイドルである。

そうではなく、自ら作詞・作曲を手掛けたり、楽曲や演奏のコンセプトに自己の意思を反映させたりということがあれば、それはアーティストと言える。ちなみに両者の間に優劣があるとは僕は思っていない。

そんなアーティストへの階段を上り始めた女子流による2回目のアコースティックライブ。

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前回はゆりちゃんが不在だったので、5人揃ってということでは今回が実質的には初回と言ってもいい。

「これからはこういう曲を歌っていきたい。こういう歌詞がこれからの女子流」といって、「Partition Love」を歌い始める。

続いて「月とサヨウナラ」「ふたりきり」「Love like candy floss」「キラリ☆」「僕の手紙(ZONE)」を。

前回と同じナンバーだが5人になったことで本来の女子流のパフォーマンスが現れた。


ダンスがなく、伴奏もギター一本という状況で、逃場もなく、誤魔化すこともできず、ひたすら曲と向かい合うしかない。

あぁちゃんは、自分が歌うときも歌わないときも、目を閉じることが多く、楽曲の世界に没入しながら歌っている。

ひーちゃんは、楽想に合わせて、顔の表情を作り、観客の方に歌を届けようとしている。

ゆりちゃんは、他のメンバーのボーカルのときにはパワーを貯めるようにじっとしていて、自らのパートが来ると満を持してハイトーンを響かせる。

めいてぃんは、リーダーらしく、メンバー全体の動きを横目で見ながらパフォーマンスを行ってる場面が目立った。

みゆちゃんだけが、楽曲のグルーヴに合わせて、弾むように楽しそうに体を動かしていて、「キラリ☆」ではピースサインのポーズも決めていた。

続いて、ギター伴奏なしで、アカペラ曲を。前回4人編成となったリベンジに「Say long goodbye」を歌うかと思ったが、なんと初披露の「追憶」を。「Say long goodbye」が2声なのに対して、いきなりアカペラの5声ハーモニーに果敢に挑戦した。パフォーマンスは正直言って発展途上だが、目指す方向はますます明確になった。これを安心して聴かせることができるような女子流になったとき、彼女達はアーティストへの階段を上り詰めているのかもしれない。

アカペラ曲を終えたところでメンバーも緊張も解けたようで、ひーちゃんが商店街を巡っているというエピソードを聞くことができた。

ギター奏者の「福ちゃん」こと福原さんが戻ったところで、みゆちゃんが「福ちゃんに質問コーナーです。Sですか、Mですか」と言ったのには面食らったけれども、アイドルじゃないから、もう何でもありなのかな。

最後にはギター伴奏で「Liar」をしっとりと聴かせてライブは終了。次回は、女子流の曲ではないカヴァー曲を歌うことが告知された。

アコースティックライブの試み(といってしまおう)は、女子流が楽曲と真正面から向い合うためのプロセスのように見えた。アーティストとして認められるためには、自らの持ち曲に対して納得感のある想いをこめなければならない。想いをこめるためには、楽曲を噛みしめなくてはならないが、今日のメンバーの姿からは、そのような意思を感じ取ることができた。

TGS Acousticのライブは、完成形を見せるというよりは、「アイドルからアーティストへ」の過程を見せるという色合いが濃いように思われる。特にVol.1とVol.2はそうだった。ここからVol.6に向けてどんどん仕上げてくるのだろうが、その成長過程を見届けたいので、これからも足を運びたいと思う。平日夜なので厳しいことも多いけれども、多少無理をしてでも観に行きたいと思わせる企画だと改めて思った。



(セットリスト)

1.Partition Love
2.月とサヨウナラ
3.ふたりきり
4.Love like candy floss
5.キラリ☆
6.僕の手紙(ZONE)
7.追憶(アカペラver)
8.Liar