叶わない恋だと知っているから気持ちはもっと熱く強くなり哀しくなり
あなたの前じゃ笑う事しか出来ず沢山の涙はあなたを想う切ない恋心
「好き」というたったそれだけの気持ちで動いた大きな片思い
(HY「NAO」)
小西の音楽祭vol.2に行ってきた。純粋に小西彩乃の歌を聴きに行くために。
あぁちゃんの直筆の題字の浮かぶステージに、今日はミニ丈の黒のワンピースで登場。黒いニーソと相まって清楚な中にも女性らしさが強調される。
一曲目はClariSのカヴァーで「コネクト」。前回も聴いたが、今回はだいぶ緊張がすくなく、客席をしっかりと見つめている。
歌い終えたところでMC。
「小西の音楽祭は全六回。私がどういう気持ちでここにいるかをお話すると、歌うことに自信を無くしていたけれども、いい指導者の方と出会って、信頼できる方と出会って、自信をもって歌えるようになってきました。だから、小西の音楽祭では、自信をもって歌っているところを皆さんに聴いてもらえる場にしたいです」と意気込みを語った。
AIの「 Believe」とプリプリの「M」を二曲続けて。あぁちゃんにはバラードがよく似合うし、彼女の持つ表現力を最大限に発揮できると思う。
MC。「こういうお仕事をしているので、いつも片想い止まりなんですけど」といきなり恋の話。恋愛禁止を謳うアイドルもあるが、思春期の女性がそういう感情を持たないわけがない。率直に語るところに、嘘をつけない彼女の人柄が滲み出る。
「片想いを歌ったこの曲を伝えるのは、やはりアカペラがいいと思いました」と語り、「長い曲なのでゆっくり聞いてください」と。
そこから軽く深呼吸して、自分の中のテンポをあわせにいく。なんどか「ちょっと待って」と繰り返いて呼吸を整えた後、HYの「NAO」をアカペラで熱唱。完全に自分の声だけで音楽の世界を作り上げる。
「叶わない恋だと知っているから気持ちはもっと熱く強くなり哀しくなり あなたの前じゃ笑う事しか出来ず」」というサビのフレーズを歌いあげるあぁちゃんのボーカルに引き込まれる。鳥肌が立ってくる。
続けてスキマスイッチの「奏」をしっとりと歌いあげる。曲を終えると「ちょっとすみません、鼻水が止まりません」と行って舞台袖に引っ込む。ステージでパフォーマンスしているときに、どんなことが起きようとも、歌うことを止めないプロ精神。そして、そのことを率直に語るところも、あぁちゃんらしい。
舞台に戻ってきたあぁちゃんは「友達」というテーマで話し始める。小学校3年生のときに、友達がなかなかできなくて悩んでガリガリになったとか、4年生のときに何でも話せる友達ができて救われたこと。高校3年になって大阪から東京に出てきたけれど、転入した学校でも友人に恵まれていて、前回の「小西の音楽祭」には来てくれてうれしかったこと、今日は来ていないので、この歌をのびのび歌えるということ。
最後の曲ということで、Kiroroの「Best Friend」を。同じくアカペラ。あぁちゃんの場合、ダンスも、バックトラックもない方が、さらに世界を伝えられるような気がする。
ゲストのひーちゃんこと新井ひとみがステージに登場。トップスにはチェック柄のシャツに黒のワンピ―ス。あぁちゃんの服とテイストが合っているように見える。
まずは中島みゆきの「糸」。振付け少な目で、歌詞を噛みしめるように歌い上げるひーちゃん。2コーラス目になると、ステージを下手から上手に移動しながら、目線を客席の前から後ろに送り始める。あ、自分とも目が合ったと感じられる瞬間があって、きっとそれは300人の観客誰もがそう感じたに違いない。こういう点、ライブアーティストとして、また、エンタテイナーとしての新井ひとみは完璧だと思う。
続いて、アゲ曲の「恋のつぼみ(倖田來未)」を。関西弁の交った曲だけど、実に楽しそうに活き活きと歌う。MCでは、彼女が小学生とのきに新体操で演技をしたときに使われたという話だった。
最後はtofubeatsの作品の「Come On Honey!」を。ひーちゃんの煽りもあって、会場からコールと振りが。バラード→アゲ曲→ダンス曲というセトリは、前半のあぁちゃんパートとスムーズにつなげた上で、盛り上げを考えたものだろう。素晴らしいと思う。
歌い終えてから、客席に向かって「みなさん、一緒に振付けをしてくださってありがとうございます」と落ち着いて言えるひーちゃんの礼儀正しさ。
そしてひーちゃんとファンで一緒に「あぁちゃん!」コール。あぁちゃんから「どうでしたか?」と。ひーちゃんが「みなさん一緒に盛り上がって下さって、温かかった」と感想。
最後に二人で歌うのは「24時間の神話」。前説のMCで、以前一度歌ったことがあると。「Limited addiction」の衣装を着てたとか、あの衣装はもう着れないよねとか、いまどこにあるんだろう、いつか展示してお見せする機会があるといいよね、とか楽しそうに語って、最後の曲へ。
ステージの上で見つめ合いながら、サビでハモる二人。最初は下手があぁちゃん、上手がひーちゃん。2コーラス目でポジションチェンジ。
歌い終えると開口一番「よかったねー!」と。あぁちゃんからは「ギリギリまで苦戦してたんですよ」と。楽しそうで、満たされた表情の二人を見ると、こちらも癒されるような気持ちになる。
シングル曲「Say long goodbye」の告知があり、今日予約すると二人の握手会があると案内して、ひーちゃんが退場。場内から拍手で送られる。
最後にあぁちゃんが、今日の音楽祭を自己評価。「前回も課題があって、今回も課題があった。今回の課題については、さっきマネージャーさんからOKをもらいました。前回よりも歌を届けられたんじゃないかと思います」と振り返って、音楽祭終了。
次回のゲストの告知がないままに握手会に移行。佐竹さんから補足のMCがあって、次回のゲストは順当にゆりちゃんであるとアナウンスされた。ということはその次の第四回がめいてぃん。残る2回はどうなるんだろうと思った。
握手回では、あぁちゃんにも、ひーちゃんにも、きちんと感想を伝えることができた。ゆっくりと話せる握手会は、女子流には貴重な機会。「セミファイナル」ということで、こういう機会もなくなっていくのだろう。いわゆる「接触」で売るアイドルが増えた中、女子流がアーティスト路線を強化するのは理解できるし、僕はそれは悪くないと思っている。
小西の音楽際の狙いは、あぁちゃんが歌で伝える機会を増やすことで磨きをかけることが狙いだと思うし、それは今のところ上手く行っているように感じる。
一方、ゲストで呼ばれる他の女子流メンバーにとっても、チームのダンスで魅せるパフォーマンスではなく、個人が歌中心で勝負する舞台を踏むことは、ボーカルでの表現という意識の向上につながるだろう。
今日のひーちゃんはその点でセトリから歌から客席の巻き込み方からレスまで完璧だった。歌を歌うことで内面に潜るようなあぁちゃんとは対極的。もちろんどちらが正解とかいうものではなく、個性、スタイルが違うということである。僕は、ときに瞑想するかのように歌の世界に入り込み、アカペラでは無音の静寂さえも支配するようなあぁちゃんの内省的な歌い方を好む。
自らをアピールすることが得意ではなく、友達ができないことを悩んでいた少女は、歌を通じて自らを表現し、想いを伝えることができること、また歌うことの楽しさを見い出したのだろう。そこで開花した才能を、そして表現への意欲を堪能することができる「小西の音楽祭」。残る4回の展開から目が離せない。
おまけ。
ロビーでスカパーのブースがあり、アンテナに出演者のサインがしてあった。
(セットリスト)
○小西彩乃
1. コネクト(ClariS)
MC
2. Believe(AI)
3. M(プリプリ)
MC
4. NAO(HY)
5. 奏(スキマスイッチ)
MC
6. Best Friend(Kiroro)○新井ひとみ
1. 糸(中島みゆき)
2. 恋のつぼみ(倖田來未)
3. Come On Honey!(tofubeats)