あの娘には負けないぞ―ドロシー対TPD「東京号泣ライブ@シブゲキ!! 〜センパイ!よろしくお願いします!」

もう決めた
あの娘には負けないぞ 伝えたい想いが弾けそう
ドロシーリトルハッピー「恋は走りだした」)

Dorothy Little Happyと東京パフォーマンスドール(TPD)の対バン「東京号泣ライブ@シブゲキ!! 〜センパイ!よろしくお願いします!」を観に、渋谷のシブゲキに行った。

TPDの自主企画として5/3〜11の9日間連続で相手を変えて行われるもの。今日のドロシーとの共演は一番人気で、先行予約の段階からチケットが売り切れになったものだった。

対バンを前に、ドロシーのメンバーはブログで意気込みを語っていた。

明日は東京パフォーマンスドールさんとの2マンライブでしヾ(o´∀`o)ノ 初めてお会いするので楽しみ!(白戸佳奈)
お久しぶりのツーマンライブ! ドロシーの歌で皆さんを幸せにできるよう!頑張ります♪(高橋麻里)
当日はみなさんと一緒にもっともっと熱くなろうと思います\(^^)/(富永美杜)
戦闘モードで行っちゃいますぜ!!(秋元瑠海)
戦闘態勢でガンバリマスッ(早坂香美)

るうちゃんとこうみんの頼もしさ! 

さて、まずは第一部。ゲストであるドロシーが先攻。出囃子が流れると、全席指定のシブゲキは総立ち。隣や前方は、来ているTシャツからTPDファンと思われる人がたくさん。

開幕前のスクリーンにレーザーで「DHL」のロゴが映し出され、それが「Dorothy Little Happy」に変わる。この都会的な演出は素晴らしい。場内の期待が最高潮に達した瞬間、幕が開いてドロシー登場。紺色のシスタータイプの衣装。

早坂香美の英語のラップに導かれ、ハードなギターが掻き鳴らされる「2 the sky」から。メンバー全員で作詞した、ある意味、今のドロシーの結束の高さを象徴する楽曲。

全員集合! 始まりの合図 聞こえたら
準備OK? 地図がないなら 感覚でいいんじゃない
(ドロシー「2 the sky」)

この曲でリードボーカルを務める富永美杜がセンターで会場を煽るように歌い出す。ドロシーのファンも、TPDのファンもこれで準備OK! エアギターのポーズをふんだんに取り入れた振付けも、会場を沸かせる。

間髪入れずに、同じくハード系の「COLD BLUE」へ。「今も 深く蒼く樹海の中で いつも姿探す」という永井真理子の叙情的な歌詞に合わせた振付けは、観る者をドロシーの世界に引き込む。

2曲終わったところでMC。メンバーの自己紹介。このライブは、同時にShowroomでも中継されている。TVカメラにもレスを送るメンバー。最後の番になったリーダーの白戸佳奈からは「今日ドロシーを初めて見る方もいらっしゃると思いますが、ぜひドロシーに恋をして頂ければと思います」との言葉に続いて「それでは聴いてください、『恋をしてるのきっと』」。

硬派な世界から始めた後、MCを挟んで、夢見るような世界へと転換するこの展開は、「STARTING OVER」のツアーでドロシーが磨きをかけてきた魅せ方。ここから「青い空」、そして、7月16日発売の新曲「sky traveler」へ。明るさと軽さを感じさせる展開。

「ドロシーらしさ」っていう言葉は人によってイメージが違うだろうけど、ホールの中にいながら「爽やかな空」を感じさせるのは、間違いなくドロシーの強みだと思う。

続いて、秋元瑠海がメインボーカルとなる「恋は走りだした」へ。

ドロシーのキャッチコピーは「 聴けばカラダが踊りだす。見ればみんなが恋をする。」 だけど、この曲は、ドロシーを初めて見た人でも、カラダが踊り出すはず! ふと隣のTPDファンの人を見ると、めっちゃ動いてる!叫んでる! 

「アイ!(アイ!) ラブ!(ラブ!)ユー(ユー!)」って叫びながら手を上げてて、俺のスペースにはみ出ててきた。いや、うれしいんですけど。。。

続いて、「アー(1度)、アー(3度)、アー(5度)、アー(7度)」と7thコードでハモるイントロ、「未来への虹」キター!タオル回し!タオル回し!メンバー名のコール! ホールなので観客を左右に移動させる煽りはなかったけど、観客席の一体感は最高潮!! ツアーの終盤の展開のような熱さ。

そこからポップスの王道の「ストーリー」へ。サビで上手から下手へ銃を撃ちまくるような振付けで会場中を魅了する。

「次は最後の曲です」って、もう?早過ぎる!と感じるのは、ツアーでどっぷりとドロシーの世界を堪能することに慣れてしまったからだろう。最後に「STARTING OVER」をじっくりと聴かせる。こういうタイプの曲はTPDにはない。そして、ホール中に響き渡る高橋麻里の歌声も、TPDにはないものだろう。

エンディングのストリングスの音が完全に消えるのを待つように拍手喝采が起きる。その拍手に包まれるようにドロシーが退場。

前列にいたTPDのファンの一人が「歌詞とか聞いてたけど、いやー、涙出てきたよ~」と隣の人に話していた。

ドロシーの「曲を届けよう」という姿勢は本当に徹底しているし、中でも「STARTING OVER」が聴く人に訴える力は凄いなと改めて思う。

(第一部・セットリスト)

2 the sky
COLD BLUE
恋をしてるのきっと
青い空
sky traveler
恋は走りだした
未来への虹
ストーリー
STARTING OVER

続いて、TPDの出番。まず、人数が9人と多く、音楽もノンストップという圧巻。一人一人登場するときにコールがあり、ダンスのキメがあるというのはやっぱり盛り上がる。レーザーの演出のシンクロとか、小道具の使い方とか、シブゲキをホームとする地の利を最大限に活用している。

メンバーの中では、僕がダンスに惹かれるということもあって、小林妟夕と橘二葉に着目していたけど、小林妟夕のソロパートは以前この劇場で見たときよりもさらに迫力を増してのびのびしている感じだった。橘二葉は華奢な体躯から繰り出されるしなやかな動きに魅せられた。

旧TPDのヒット曲「ダイヤモンドは傷つかない」のリメイクで盛り上がるのは当然だが、来月発売の「BRAND NEW STORY」のテンションの高さもなかなかで、これはセールス的にはヒットするだろうと思わされる。

TPDのパフォーマンスが終わると最後にドロシーが再登場。TPDから今日の対バンで何を学んだかを言うのだが、橘二葉から「指先まできれいなダンス」という言葉が。さすがよく見ている。他のメンバーから「ダンスの練習の秘訣」について質問があり、早坂香美が「一緒に鏡で踊って、自分だけではなく、他のメンバーのもチェックして、おかしいところがあったら直す」と答えていた。TPD、今日の対バンで相当学んだのではないだろうか。

ドロシーからは「皆さん若くてフレッシュですね。私達もフレッシュに。第二部では頑張ります」との言葉が。

最後に一緒に記念撮影。

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第一部をあえて採点してみると、ドロシーは5人一緒というスタイルを堅持しているので「ノンストップ」にはならないものの、MCを短めにしててカッコいい系もかわいい系も聴かせ最後は勝負曲の「STARTING OVER」で締めた。一方、TPDは物量をふんだんに使い、ノンストップのダンスで勢いよくガンガン攻めるという、ある意味でショービジネスの王道を見せた。緻密さのドロシーと勢いのTPDという双方の持ち味が発揮された形で、甲乙付け難い。ということで、両者引き分け。

続いて、第二部。座席はなんと最前列センターよりちょい右というポジション。パフォーマンス全体を観るにはもう少し後ろの方がいいのだろうと思うが、ここからメンバーを観ることができるのは凄そうだ。

今度はTPDが先攻。今日二度目だが、至近距離で見るとキラキラした輝きが凄い。衣装に着けられた金属かスパンコールのところがライトやレーザーに照らされて反射する。それが9人分。清楚さと上品さを保ちながらも露出度が意外に高く、ちょっと目のやり場に困ることも。

TPDのダンスは激しくキレがある。これはこれで素晴らしいパフォーマンスだが、気持ちを落ち着かせてチェックすると、各メンバーのダンスの揃い方、細部の表現、ボーカルの力量という点でまだまだ荒削りな点も目につく。これは僕がドロシーに目が慣れているせいかもしれないけれども。

しかし、第二部になって、僕のすぐ後ろの2列目の熱烈なTPDファンが集結していて、口上やら、コールやら、合いの手やら凄く入れていて、ややラフなステージもファンの熱さとの相乗効果でかえって盛り上がっている感じ。これは、第一部よりもドロシーにとってアウェイかも。ドロシー頑張ってほしい。っていうか、自分も最前列に来た以上、率先して楽しんで盛り上げないと。。。

いよいよ、後攻のドロシーの出番。出囃子と同時に幕に「DHL」「Dorothy Little Happy」のレーザーが映り、メンバーのシルエットもうっすらと浮かびあがる。上手に向かって縦に5人並んでいるこのフォーメンションは…!

冒頭から「恋は走りだした」来た! 第一回のセトリで一番観客席が沸いた感じがあるこの曲。知っている人はもちろん、知らない人もいきなり盛り上がれる。そして僕も「盛り上げないと」なんてことを忘れて、自然に体が動き出す。「ウォーオーオーオー!(ウォーオーオーオー!)」のコールアンドレスポンス。秋元瑠海のボーカルも絶好調。

もう決めた
あの娘には負けないぞ
伝えたい想いが弾けそう

恋のライバルを意識したこの歌詞が、対バン相手のTPDに向けた秋元瑠海の宣戦布告のようにも聞こえる。

続いて畳みかけるように「My darling」。るうなちゃんがブログで「戦闘モード」と言っていた攻めの姿勢がはっきりと。さっきの第一部のセトリも良かったけど、相手のパフォーマンスや、会場の雰囲気を見て、調整してきたんだろうかと思う。

自己紹介のMC。第一部と逆順。

「今日の出演者の中で唯一の20代、白戸佳奈です」…場内から笑いが漏れ、雰囲気が和む。
「こう見えて実は17歳、秋元瑠海です」…お、盛りあがってきた!
「気持ちは15歳!高橋麻里です」…あの声で言われたら15歳もあり得る!
「メンバー最年少(笑)17歳の早坂香美です」…雰囲気とのギャップに小さな歓声が漏れる。
さて、最後にみも!
「なんのひねりもありません!17歳富永美杜です!」…ひねらない、飾らないところがみもの魅力!

ということで17歳を強調したところで、次の曲は…

ドラムソロ、キター!ということで、「ソウル17」!ツアーでは全然聴けなかったけど、1月13日の白戸佳奈成人式記念ライブ(@仙台ダーウィン)の第二部以来? 

「第二部はフレッシュに」ということだったけど、こう来たか! ストレートなロックチューンに観客席も体が動き出す様子。最前列なので全然見えないけど、館内の熱量からそんな想像をしつつ、僕も踊り出す。

そこから、ドロシーらしい内面描写が聴かせどころの「ASIAN STONE」と「明日は晴れるよ」。2曲とも永井真理子作詞。前者は「新しい世界に飛び込む決意と不安」を歌っているし、後者は「挫折したものへの共感と慰め」を歌う。強さと弱さ、光と影はともにある。それこそが人間だと思う。強さだけでは疲れるし、光だけでは薄っぺらい。ドロシーの世界には、優しさと深みがある。

続いて、新曲の「sky traveler」をじっくりと聴かせた後、アップテンポの「諦めないで」へ。コールの熱さも凄いが、間奏部分の激しいダンスはTPDにも全然負けていない迫力。髪を振り乱して踊る早坂香美にはダンスの神が憑依したように見える。

畳みかけるように「2 the sky」へ。新しい振付けはダイナミックで、ステージ一杯に広がってエアギターを掻き鳴らされると、否応なく盛り上がる。「かわいいドロシー」も好きだけど、第二部は完全に「かっこいドロシー」の世界だな。

そろそろ最後の曲になる時間。なんだろう。「nerve」から「デモサヨナラ」か、と予想していたら、今のドロシーの魅力の詰まった「ストーリー」が始まった。MCで「次で最後の曲になります」「えー!」というお約束のやりとりはなかったけど、今日はこれでお別れだって、目が合えば分かってたんだ! ということで、曲が終わるとドロシー退場。

(第一部・セットリスト)

恋は走りだした
My darling
ソウル17
ASIAN STONE
明日は晴れるよ
sky traveler
諦めないで
2 the sky
ストーリー

最後にTPDがステージに登場し、再度ドロシーを招く。今日の対バンで何を学んだかを橘二葉が今日二回目の発表。さっきは指先のことを言ったが今度は「歌とダンスが揃っていて、メンバーの心が合っているところを学びました」という言葉が。橘二葉、まだ若いのに良く見ている。才能は才能を知るということで言えば、さりげなくドロシーがこなしているパフォーマンスの凄さを一番理解したのはダンスの得意な橘二葉なのかもしれない。

ここでTPDメンバーから質問が。

まず「ドロシーのメンバーのみなさんは姿勢がいいんですけど、みなさんバレエを習っていたんですか」と。これに対して、早坂香美が「バレーボールなら…」と言って、レシーブのポーズを取りながら答えていた。真面目なのかボケているのか分からない。

続いて別のTPDメンバーから「私達は開演前に円陣を組むんですけど、ドロシーさんは開演前にどんなことをしているんですか」という質問が。これには、秋元瑠海が「ライブの前にはミーティングをして、一曲一曲、この曲で何を伝えたいかを話し合って確認します」と真面目に回答。ドロシーの場合、ダンスや歌の基礎的なテクニックはきちんとできていることは前提で、その上で、ステージで表現するときの「曲想」について、メンバー全員で同じように理解して表現しようとしているということ。るうなちゃんの真面目な回答に好感が持てた。でも、その秘密をTPDが知ってしまったら、強力なライバルに育ってしまうかもしれないなとも思った。

最後に一緒に記念撮影。
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全員白い衣裳でまぶしい(笑)

第二部を採点するならば、攻めのセトリでTPDを上回る勢いを出しながら、曲想の表現でメッセージを伝えてきたドロシーの勝ち。

ということで、今日の対バンは僕の採点では「一勝一分け」でドロシーの勝ち。まあ、これはひいき目が入っているかもしれないけど、TPDのファンの人の採点では「一勝一敗」だったので、両者ともに持ち味を発揮した好勝負になったのではないかと思う。

最後に、自分なりに両者の違いを分析しておく。

まず、TPDのパフォーマンスは、彼女達が持っている魅力を外へ外へと発散して見る者を圧倒しようとする。特に脇あかりが観客席に送るレスの破壊力は凄い。一方で、ドロシーのスタイルは、自分たちの伝えたい世界をステージの上に作り上げ、観る者をそこに引き込みに来る。

このドロシーのスタイルは、瞬間的なレスで衝撃を与えるというような表面的なものではなく、完成度の高い総合芸術のようなパフォーマンスで、作品世界に入り込ませて内面から感動を与えるもの。

これは、メンバーが良く言う「ドロシーに恋をする」という状態で、時間が経てば経つほど、ドロシーのことが忘れられなくなり、またドロシーのステージが見たくなるという…

こんな風に思わせることのできるアーティストはなかなかいない。少なくともいまの僕にとっては。
ますます加速するドロシー。応援していきたい。