『東の海神 西の滄海 十二国記』小野不由美

小野不由美十二国記シリーズを順番に読んでいく。今回は『東の海神 西の滄海』。

ストーリーは以下の通り。

国が欲しいか。ならば一国をやる。延王尚隆(えんおうしょうりゅう)と延麒六太(えんきろくた)が誓約を交わし、雁国(えんこく)に新王が即位して二十年。先王の圧政で荒廃した国は平穏を取り戻しつつある。そんな折、尚隆の政策に異を唱える州侯が、六太を拉致し謀反を起こす。望みは国家の平和か玉座の簒奪(さんだつ)か──二人の男の理想は、はたしてどちらが民を安寧(やすらぎ)に導くことになるのか。そして、穢れを忌み嫌う麒麟を巻き込む争乱の行方は。

ここまでの巻は、人物に焦点が当たっていて、国はどちらかといえば「背景」になっていた。だが、本巻は「国記」という名前に相応しいくらいに国の姿が描かれる。どんな国が望ましいのか。それをどのように担うのか。誰がそれを実現するのか。王はどのような役割を果たすべきか。麒麟は王にどう向かい合うべきか。

これまでの巻の中で最も「熱い」展開。重厚までの国家論、主君論が論じられる中、登場人物の会話には、どこか軽妙さがある。老練な作家による歴史小説のように。いや、もはや小野不由美は老練な作家の域に達していると言えるのかもしれない。

しかし、ここまで個々の人物にフォーカスを当てて十二国の歴史を書いていくのであれば、一体どれくらいのペースで完結するのだろうか。気が遠くなりそうだ。

東の海神 西の滄海  十二国記 (新潮文庫)

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