志村貴子は、このところ『放浪息子』と『青い花』を立て続けに終わらせた。何か事情があるのか、偶然の符合なのかは分からない。
ファンの一人としては、『青い花』が性急な形で終わるようなことがないといいなと願っていたが、この巻を読んでその心配は杞憂に過ぎないことが分かった。
表紙は、あきらとふみ。この組み合わせは1巻以来しばらくなかったもの。だが、さまざまなサイドストーリーや紆余曲折を経ながらも、結局はあーちゃんとふみちゃんの関係が柱なのだ。
物語の終盤に入ってからは、その関係自体が中心になるというよりも、あきらの内面に焦点が当てられる。彼女は自分が誰を好きなのか、どうしたいのか、そして自分が何者なのかをようやく見出すのだ。『放浪息子』と同じく、これはアイデンティティの物語なのだ。
「人がどうあろうと、人にどう思われようと、好きなものは好き」と主張することは意外に難しい。見つけた自分を貫いていくことに障害が出てくることもあるだろう。だが、心の中に確固たるものを見出した者は強い。
世の中にはいろいろな人がいるが、お互いの価値観を尊重し、偏見を持たずに共存していけたらいいと思わずにはいられない。それは、性的マイノリティの話だけではなく、趣味であったり、職業であったりするのだけれども。
心の中に強さをもって、登場人物のそれぞれが自らの道を歩いて行けることを期待できる終わり方だった。ネタバレは避けるが、納得感があるし、希望も持てる。宝物のような全8巻。鎌倉の風景とともに少女たちの青春は永遠に刻まれることになった。
追伸。井汲さんの話はもう少し読みたいので、番外編が描かれることがあるとうれしい。

- 作者: 志村貴子
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2013/09/12
- メディア: コミック
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