アンドレアス・グルスキー展@国立新美術館

グルスキーの代表的な作品は、今回の展覧会のキービジュアルにもなっている『カミオカンデ』だろう。静謐な空間に、整然と、だが、圧倒的な数で輝く金色の物体たち。まるで三十三間堂の仏像群のように、神々しい。これが宗教施設ではなく、研究施設なのだからなおさらだ。

他にも、シカゴや東京の取引所を写したもの、モンマルトルや上海の建物を写したもの。どれも幾何学的なパターンと不規則な色彩の組み合わせが特徴的。

大伸ばしにされた作品は、これでもかというほどディテールを映し出している。そして、構図はシンメトリーを基調としていて、直線に歪みがない。

こういう作品を撮るためには、中判カメラ+シフトレンズ+三脚が必要だろう、などと考えながら展示を終える。いまなら、FoveonセンサーのシグマDP Merrillシリーズで撮影して、Photshopで歪曲を補正すれば、技術的にはグルスキー的な作品を撮ることは容易かもしれない。だが、これだけのロケーションを探しているところと、その切り出し方にこそ、彼のセンスがあるのだ。良い機材だけでは良い作品は生まれない。

個人的に印象に残ったのは『モンマルトル』。取引所や空港も絵としては面白いけれども、モンマルトルの集合住宅の一つ一つの窓から覗く一人一人の生活が感じられて、なんともいえない迫力があった。

一つ気に入らなかったのはショップの品揃え。ポストカードの種類が極端に少なかった。豪華写真集やフレーム入り写真といった高額商品を売ろうという魂胆が見え見え。アーティスト本人の意向がどの程度あるのか分からないが、せっかくグルスキーの日本初の個展なのに、ここでファンの裾野を広げないでどうするのか。主催者は「国立新美術館読売新聞社、TBS、TOKYO FM」ということだが、もう少しなんとかならなかったのだろうか。

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(PHOTO:シャープ、CAMERA:OLYMPUS XZ-1)