リメイク版『奥様は魔女』

リメイク版というタイトルにしたが、ニコール・キッドマン主演の『奥様は魔女』は厳密にはリメイク版ではない。原作のリメイクを劇中劇として取り入れながら、全く別の作品になっている。監督は『恋人たちの予感』』『めぐり逢えたら』『ユー・ガット・メール』等で知られるノーラ・エフロン。トレンディドラマ系、というか、軽いラブコメ系というか。

主演のニコール・キッドマンは年齢を感じさせないかわいい演技を見せているが、隠し切れない大御所のオーラがにじみ出ていて、この作品に必要な軽妙さを奪っている。

相手役のウィル・フェレルは、何とも憎めない中年男性で、最後の方には体当たりの演技も見せてくれている。が、こちらも、ニコール・キッドマンの持つ品格とは相入れない下世話な雰囲気が漂っている。要するにミスキャストなのだ。似合っていないし、演技もかみ合っていない。

脇を固めるシャーリー・マクレーンとマイケル・クラインは、実力に裏打ちされた渋い演技を見せてくれる。が、脚本全体が陳腐なので、感動するというレベルには至っていない。

NYのブロードウェイミュージカル『WICKED』のグリンダ役で観客を魅力したクリスティン・チェノウェスがコミカルな役どころで出演していて楽しませてもらったが、もう少しひねりをきかせてもよかったかなと思う。一緒に登場するヘザー・バーンズの黒髪・眼鏡は、『WICKED』のエルファバへのオマージュなのかなと勝手に妄想。個人的には、ニコール・キッドマンよりも、目を奪われるキャスティング。どんだけ黒髪・眼鏡好きなのかと。

商業的にはコケた作品ということで片づけられている。ニコール・キッドマンという大女優を使っていながら、いや、むしろ使ったからこそ、原作を超えることができなかったのではないかと思う。ノーラ・エフロンも焼きが回ったというべきか。時流を掴むのが得意な人であったと思うが、寄る年波には勝てず、時流からずれてしまったというべきか。この作品の後に、遺作を一つだけ残してこの世を去った。合掌。