サム・メンデス監督が好きだ。浮かれていた90年代に『アメリカン・ビューティ』でアメリカの偽善の皮を剥がしたのだから。
だが、この『スカイフォール』はどうか。英国の闇を暴露するようでいて、結局のところは、そこには辿り着かない。そこに行くには007は死ななくてはならないからだ。彼に生きる理由を与える時点で、サム・メンデスの批判精神の発露は封印されたようなものだ。
で、中身はどうか。鍛えられた肉体でスーツをきれいに着こなすダニエル・クレイグはセクシーである。が、往年のボンドを知るものの視点からは、セクシーな場面が少ない。ボンドカーは出てきたけれども、ボンドガールは誰だったのか、と聞きたくなるレベル。
ロケ地となった上海のいかがわしい華美さ、そして軍艦島の退廃的な美しさは特筆すべきレベル。いずれも、西洋から見た東洋で、サイードあたりからは「オリエンタリズム」と批判されそうな視線だが、それはそれで良いではないか。日本の廃墟の美しさが世界に評価されたのだから。
総じて、エンタテイメント作品としては及第点ではあるものの、「007」の冠が付いていなくても成立してしまう作品ではないだろうか。途中、『ボーン』シリーズを連想させる場面が出てきたこともあり、余計にその思いが強くなった。
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