B級な、あまりにB級な―『ダーク・シャドウ』

ティム・バートン×ジョニー・デップ。この組み合わせから生まれる「バッド・テイスト」を『ダーク・シャドウ』はたっぷりと味わせてくれる。『アリス・イン・ワンダーランド』では相当薄まっていた毒気がたっぷり。笑えないブラックジョーク。趣味の悪いエログロなシーン。そして「え?こうなるの?」と唖然としてしまう展開。まさにB級映画と呼ぶべき作品だと思う。

公式サイト:映画『ダーク・シャドウ』公式サイト

この「バッド・テイスト」は『チャーリーとチョコレート工場』に通じるものがある。ダークでゴシックな映像は、目を釘付けにするほど美しい。だが、ストーリーは細かいギャグの連続、それも笑えないブラックなものを多数含んでいる。これを見ながら苦笑する余裕がないと厳しい作品だ。『パイレーツ・オブ・カリビアン』的なスタイリッシュなジョニー・デップを期待して軽い気持ちでデートコースに組み込んだりすると、その後の会話に困るかもしれない。でも、異形の者を演じさせたらやっぱりジョニー・デップは巧いなと思った。

その他のキャストも良かった。不動のレギュラーであるヘレナ・ボナム=カーターは、相変わらず酷い役を楽しんで演じている様子がありあり。また、ミシェル・ファイファーの毅然とした雰囲気、エヴァ・グリーンの悪魔的な美しさ、ベラ・ヒースコートの透き通るような清楚さ、ジャッキー・アール・ヘイリーの歪んでいるように見える純粋さは、ティム・バートンの世界に奥行と広がりを加えていた。

だが、何といっても注目はクロエ・グレース・モレッツ。反抗期の15歳を実に自然に演じていた。言葉遣いの悪さは『キック・アス』並。でも彼女は『ヒューゴの不思議な発明』での優等生っぽい役よりも、こういう癖のある役の方が断然輝く。ベテランの俳優陣と並んで全然負けていない。

全編を覆うように流される1970年代の音楽もクール。リアルタイムではほとんど知らない曲ばかりだけど。そして、音楽ということでは、驚くようなゲストも…(ネタバレ回避のため書かずにいます)。この辺、ほとんど制作陣の趣味なんだろうな。3D作品ではないが、IMAXで視聴し、映像美と音楽を堪能できたような気がする。

帰りがけに劇場内でクロエをパチリ(ポスターの一部だけど)。ずいぶん大人っぽく見えるもんだ。

(PHOTO:シャープ、CAMERA:OLYMPUS XZ-1)