『セザンヌ―パリとプロヴァンス』@国立新美術館

ポール・セザンヌ。彼の作品には、熱に浮かされたような迸りや、抑えきれない衝動というものは微塵もない。見えるのは、絶え間ない努力と、あくなき探究心。禁欲的で理知的。

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銀行家の長男に生まれ、大学にも入った。だが、芸術への想いを断ち切れず、父を説き伏せて、画家への道を歩き始めた。彼が画家になることを、厳格な父親が認めるかどうか。この点が画家・セザンヌの誕生にとってポイントだったはずだ。

父は、エクスに購入した別荘ジャス・ド・ブッファンの壁画をセザンヌに描かせた。父なりの試験だったのだろう。セザンヌは『四季』という作品で、父の許しを得た。後のセザンヌの作風とはかけ離れたモチーフと筆致だが、これは息子なりに父の趣味に寄り添ったものであろう。

静物画や風景画が多数集められたこの作品展で、最も印象に残ったのはこの『四季』だった。息子の才能を見極めようとする父の愛。そして、父の期待に応えようとする息子の愛。その両方がそこにはあった。