「文学少女」じゃない―『ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常』

栞子さんは俺の嫁。ということで、ビブリア古書堂シリーズの2作目を読んだ。

第1作のラストで登場人物の行方に謎を残していたが、誰もが読みたがった五浦と栞子さんの物語がまた始まる。今回は3冊の書籍にまつわる3つのお話がメイン。うち1冊はなんとマンガだ。それもかなり昔の。

どのストーリーも特徴のある「本」を題材にしていて、登場する人物にもリアリティがある。そして、込み入った事件の真相を、わずかな手掛かりだけで突き止めてしまう栞子さんの安楽探偵ぶりは健在、といえる。今回取り上げられる本は以下の通り。

坂口三千代『クラクラ日記』(文藝春秋
アントニイ・バージェアウ『時計じかけのオレンジ』(ハヤカワ文庫NV)
福田定一『名言随筆 サラリーマン』(六月社)
足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦』(鶴書房)

本作の終盤で、謎に包まれている栞子さんの母親の話が出てくるあたりが最大の山場。栞子さんも、ただの本好きのおたくではなく、深い洞察力に裏打ちされたなかなかの商売家であることが分かる。そして、これはどうも母親譲りのようだ。栞子さん本人についてはさらに謎が深まった。

まだまだ飽きさせない展開で、今後もコンスタントに新作が出るといいなと思う。本好きの女性が事件の真相を突き止めるという点を指して、野村美月の『"文学少女"』シリーズに似ているという評判もあるが、個人的には全く違うと思う。文学少女シリーズでは、遠子先輩は、古今東西の名作文学のプロットを元に、目の前の事件にまつわる当事者の心理や行動を類推する。一方、ビブリア古書堂シリーズでは、栞子さんは、一冊の古書が含んでいる情報から持ち主をプロファイリングして、事件の真相を推理する。要するに"文学少女"は作品好きであり、栞子さんは本好きなのだ。また、二人は体型も結構違ってそうだ。どちらが好きかというのは…まあ人それぞれだろうと思う。「栞子さんの実写版は綾瀬はるか」なんていう意見も目にしたが、身体的特徴の一部に目を奪われすぎだと思う。個人的にはいかにも本が好きそうなキャストであって欲しい。